第1章・6話『もう1つの存在 壱』
―紅魔館―正門前―
しとねと魔理沙の2人は正門前の惨状に言葉を失う。
地面は至る所が抉れ、門の扉は壊されていた。
魔理沙「マ、マジかよ……」
しとね「現状……かなり不味いですかね」
2人は門の壊れ具合を見ながら中を伺う。
中庭に気配は無く、玄関の扉が片方開っ放しだった。
魔理沙「……誰も居ない、か門番の美鈴も見当たらないし」
しとね「罠、でも入るしか無いですね」
2人は開いている玄関を警戒しながら門をくぐる。
魔理沙「しとね、先ずはパチュリーを見つける」
しとね「確か魔理沙と同じ魔法使い……でしたよね」
魔理沙「ああ、アイツが無事ならかなり余裕が出てくる」
魔理沙が中を伺いながら入って行く。
しとねも後ろを付いて行こうとしたが────
トンッ……とお腹へ何かがぶつかる感覚があり、それを確かめる。
手……だった、誰も居なかったはずのその場所に中華服を着た人が片膝を付いていた。
『誰』と問い掛けるより早く、その人が素早く息を吐きながら手に力を込め、呟く。
美鈴「紅砲」
瞬間────しとねは襲い来る衝撃で中庭に飛ばされる。
しとね「がっ!?」
中庭まで飛ばされたしとねは落下するが、勢いは収まらず門の近くまで転がりようやく止まった。
魔理沙「なっ……美鈴!?」
美鈴「……」
美鈴は魔理沙を一瞥し、中庭へ出てくる。
しとねは咳き込みながらも立ち上がり、美鈴を見据えながら魔理沙へ声を掛ける。
しとね「ゲホッ……魔理沙、この人の相手はしますから別行動で」
魔理沙「お、おい!」
2人の間には美鈴が居る、そう易々と合流は出来ないだろう……だからこそしとねは美鈴の相手を引き受け、魔理沙に先へ行かそうと。
魔理沙は手を握り唇を噛み。
魔理沙「……やられんなよ、しとね」
しとね「善処します」
魔理沙は館の中へ消えていく、美鈴は中庭で構えたまましとねを見ていた。
しとね「はぁ……(ジン、あの人から鱗の気配は?)」
しとねは息を整えながら、ジンへ問い掛ける。
ジン「(無いな、だが気をつけよ)」
ジンに確認し終わったしとねは舘からの気配に気付き、美鈴から注意を逸らす。
美鈴「ふっ!」
美鈴は一息でしとねの前まで迫り、もう一度手をしとねのお腹へ突き出す。
しとね「……っ!」
パチンッ美鈴の突き出した手を辛うじて払ったしとねはその手を美鈴へ突き出し返す。
美鈴はそれを躱し、しとねの背後を取ろうとし……
しとねは美鈴の首辺りを肘打ちする。
美鈴「……うぐっ」
蓄積していたダメージに加え、しとねからの攻撃で美鈴はその場に崩れ落ちるしかなかった。
しとねは息を整えながら倒れた美鈴を近くの塀へ運び、中庭を歩いていたが────
???「穿ちて、消し飛ばせ……」
濁った声と共にキュイィン!!!と、振り返ったしとねの視界を光線が埋め尽くしながら襲い来る。
しとねは魔法障壁で防ぐが……バキッと音と共に障壁へひびが入っていく。
バリィンと障壁が破られる、しとねは迫り来る光線を見ているしかなく。
轟音と爆発が起き、正門近くは煙で見えなくなっていた。
???「この程度か?龍を宿す者の実力は……なら食いごたえが無さ過ぎだな」
ガシャッと音を鳴らし、舘から鎧が呆れたように喋りながら出て来た。
しとね「ゴホッ...ヴ...ゲホッゴホッゴホッ...」
???「ほう、あれを咄嗟ながらに避けていたとはな」
立ち上がれず横たわり、咳き込むしとねは霞む視界で鎧を見つめる。
???「誰だ、と問いたいようだな」
鎧はしとねへ近付きながら、察した様に話し始める。
暴食「我は大罪が1つ、『暴食』だ」
しとね「……っぐ」
鎧はしとねの髪を掴み上げ、その顔を覗き込みながら……
暴食「無様だな、龍を宿す者よ」
ケハハハと高笑う暴食に、しとねは意識が遠のいていった。
???「幾ら外の者が関係しているとしても幻想郷では……やはり、博麗の巫女以外には無理があるだろう……紫よ」
高笑う暴食を見下ろす人影が1つあった。
────第1章・6話『もう1つの存在』────
作品名:第1章・6話『もう1つの存在 壱』 作家名:U46 410n