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第1章・7話『もう1つの存在 弐』

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東方星写怪異録 第1章・7話


―紅魔館―中庭―
高笑いしていた暴食はしとねの首をおもむろに掴み、その手に力を込める。
暴食「さあ、お前の内に居る龍の力……喰わせてもらうぞ」
ニタァ……と邪悪そのものな笑みを浮かべる暴食と。
しとね「……ウッ…ァ……アグ」
どんどん顔が青ざめていくしとね。
???「はぁっ!」
ザシュッと何かが切れる音がし、ゴシャアと……しとねの首を掴んでいた筈の暴食の腕が鎧ごと地面に落ちる。
暴食「……?」
暴食が呆気に囚われていると、頭上から声が聞こえてきた。
???「ふん、こんなものか?外から来た悪意よ」
空に浮かぶ様に立っていたのは……黒を基調とした巫女装束に身を包み一振りの太刀を持った少女だった。


―館内―書物庫―
ギイイイ……と重たい扉を開け、魔理沙は書物庫へ入る。
魔理沙「すんなり入れると逆に怪しいな」
奥行が分からない程広い書物庫を魔理沙は迷うこと無く歩いていく。
魔理沙「やっぱりここに居ると思ったぜ……パチュリー」
パチュリーと呼ばれた少女は視線だけを動かし……
小悪魔「魔理沙さん……やっぱり来てしまったんですね」
パチュリーが積み上げた本の壁から小悪魔が姿を現す。
魔理沙「予想通りの展開って事か」
魔理沙は八卦炉を取り出し、パチュリーへ向け……
パチュリー「私と闘っても異変は解決出来ないわよ」
魔理沙「邪魔される前に倒しておくってのも、一つの手……だろ」
2人を交互に見ながら慌てている小悪魔を余所にパチュリーと魔理沙はお互いに睨み合う。
パチュリー「はぁ」
数分の沈黙はパチュリーの溜息で終わりを告げた。
パチュリー「先に教えておいてあげるけど、今回の異変はレミィじゃない……そもそも私達は誰も異変を起こしていないのよ」
パチュリーの言葉に魔理沙は戸惑いながらも聞き返す。
魔理沙「じ、じゃあ誰が起こしたんだよ」
パチュリー「外から来た鎧の人形よ」
パチュリーは開いていた本を閉じ、魔理沙の方を向き話始める。
パチュリー「奴が紅魔館への侵入したのを最初に気付いたのは咲夜だったレミィは咲夜に追い出すよう告げたの……でも咲夜は返り討ちにされて、私も含め誰も奴に手が出なかったわ」
魔理沙「フランでもか?」
パチュリーは俯き……首を横に振る。
パチュリー「フランは能力を使って奴を吹き飛ばしたの、でも奴は笑いながら復活したのよ不死身とかそんなのじゃない……」
魔理沙「咲夜やレミリア達は、どこにいるんだよ」
パチュリー「広間に居る筈よ」
魔理沙は頷き、踵を返して歩き始める。
パチュリー「魔理沙……闘うつもり?貴方じゃ歯が立たないわ」
魔理沙「だろうな、でも……中庭でしとねが闘ってるんだ」
魔理沙は箒に跨り、来た道を戻る。
魔理沙「(しとね……無事でいろよ、まだお前に謝れてすら無いんだからなっ!)」


―紅魔館―中庭―
暴食は数十メートル後ろに飛び、禍霊夢と距離を置く。
暴食「……貴様は?」
グヂュ……クヂャと断面から不吉な音を出し切り落とされた筈の腕を再生させながら暴食は黒い巫女に問い掛けた。
禍霊夢「私か?博麗霊夢の心の闇……とでも言っておこう」
刃先を暴食へ向けつつ禍霊夢はしとねの傍に歩いていく。
暴食「貴様もそいつの力が目当てか」
禍霊夢「まさか、私の目的は……此処から貴様を消し去る事だ」
しとねの傍に寄った禍霊夢は首元に手を当て脈を測る……
禍霊夢「気を失っているだけか、見かけによらず存外丈夫だな」
そう言うと禍霊夢はしとねから離れ暴食の前に立ち塞がる。
禍霊夢「さて、遺言くらいは聞いておいてやろう」
暴食「巫女の闇風情が……大罪の名を冠する我を消せるか?」
ククッと笑う暴食は両手を掲げ────
暴食「ひと度姿を現せば血を吸うまで納まらず。死を目にするまで斬らずにはいられなく。傷は決して癒える事が無い。」
来たれ、魔の斧『ダーインスレイヴ』よ!と呟き、手を振り下ろす。
瞬間……暴食の周りの風が巻き上がり、禍霊夢は咄嗟に手で顔を庇う。
暴食「クハハハハ、これを握る事になるとはな」
風が収まり、禍霊夢が目にしたのは……斧を持ち、不吉に笑う暴食だった。
禍霊夢「……」
禍霊夢は静かに暴食を見据え、一息で数十メートルを詰め……斧を持つ方の腕を切り飛ばす。
暴食「ほお、良い刀だ我の鎧すらも断ち切るとは」
禍霊夢「終わりだ」
ガギイイ……と暴食の頭へ振り下ろした禍霊夢の太刀は反対の手に掴まれていた。
禍霊夢「!?」
暴食「我の鎧は強度を自在に変化出来る……故に斬らせていたのだ」
暴食は太刀を掴んだまま禍霊夢を振り回し、地面に叩きつけ太刀を放り投げる。
禍霊夢「がっ!」
背中から叩きつけられた禍霊夢は咳き込みながらも立ち上がろうとする。
暴食「黒い巫女よ、終わりだ」
斧を振りかぶり、立ち上がろうとする禍霊夢へ振り下ろす。

────第1章・7話『もう1つの存在 弐』────