ようこそ、Bar.Aleへ!
始まりの物語
日海島、この世界に存在している唯一の国である。
国土面積は海上面積と同一で、人口は40億人を超えている。
この世界の技術は国外に流れる概念がなく、国内で成長していき高層ビル群は然り、大型機動スーツや光学レーザーなども制作された。
9,10世紀前の人が信仰していた非科学的内容も、徐々に覆されている。
世界はそれほど高度に成長し、日常に機械を目にするのは当たり前と化していた。
5年前の惨劇がなければだが....
5年前、その日は新しい王が誕生するはずだった日だ。
通常なら、その王の即位記念日になるはずだった。
しかし、その日には異生物襲撃鎮魂日という名前がついている。
そう、言葉通り、異生物つまりは未確認生物が襲撃した日だ。
未確認生物は、言葉を発することなく、人類に鋭利な爪を向けたのだ。
軍は生物の調査をしようと試みるが、何度となく失敗し、彼らが発表した内容は奴らの個体名を「ヴァーレック」と名付けたことと、奴らの行動の詳細だけだった。
軍が発表した内容によれば、ヴァーレックは二足歩行型と四足歩行型がいるらしく、機関銃の銃弾を跳ね返し、爪は装甲車を鉄くずに変えたそうだ。
また、奴らを仕留めたとしても、数分で消滅してしまうらしく、生物としての研究は不可能とも発表した。
ヴァーレックとこの国の戦況は圧倒的で、軍の兵器は数が減っていく一方だった。
そして、同年5月19日に日海島、最大の都市-中都-にヴァーレックが初めて奇襲をかけた。
人々はまず、近辺の建築物に身を潜めた。
しかし、装甲車を容易く鉄くずに変貌させる爪だ。
ゆうに辺り一面の建築物は、変容していき1時間足らずで都市は壊滅一歩手前まで追い詰められた。
人は次々と惨殺されていき、対抗手段も枯渇していく。
そんな中、壊滅した道路の上で横たわる女性の横で少女が泣き叫んでいる。
銃声と崩壊の際の重い音が響き、その声はかき消される。
しかし、ヴァーレックはそんな些細な音さえ逃さない。
一体のヴァーレックが少女の方向に向き、鋭利な爪を有する腕を振り上げた。
軍で気づくものは一人としておらず、死者が一人増えようとした。
が、しかしそんなことがあっては5年も世界はもたない。
金属同士が衝突するような重低音と共にヴァーレックの頭蓋は、胴体を引き連れて後方へと吹き飛んだ。
死者に加算されかけた彼女が語ったのだ、間違いはないだろう。
吹き飛んだヴァーレックは建築物の破片に衝突し、消滅した。
先に言ったように軍は誰一人として彼女に気付いていない。
そんな中、男が一人、落ち着いた声で少女に声をかけた。
「お嬢さん、大丈夫かい?」
唖然とし泣き止んだ少女は、ゆっくりと頭を縦に振る。
男は「ならよかった」と一言発したのち、大きめの瓦礫と同質量はありそうな盾を持ち上げ、前へ進んでいく。
「ヴァーレックは軍をよそにし、自由奔放に暴れている!各自、被害を最小限に抑えるように動くよう!」
男はまるで仲間がいるかのように耳元に手を当てて大声で叫んだ。
「つまりは見つけた先からぶん殴ればいいんだな、テキーラ!!」
声のした少女の後ろには男が一人、何かを掴んで歩いてくる。
少女はその何かが分かった瞬間、「ヒッ!」という悲鳴を漏らした。
それもそうだろう、彼の持っていた物はヴァーレックの頭部なのだ。
「マティーニ!そんな下品なものを早く捨てろ!」
「え?あぁ、ついさっき一匹吹っ飛ばしたの忘れてたわ」
男は手に持っていた物を放り投げた。
「まったく....。とりあえず、この子を安全なところまで連れて行くぞ」
「いや、あんただけでできるだろ?俺は片っ端から奴らを....」
「お前には俺の支援をしてもらう。いいから付いてこい」
「お前の支援だと?その盾で十分戦えるだろ」
二人はお互いをいがみ合うかの如く、睨み合う。
そんな中、マティーニと呼ばれた男の腰に付いたトランシーバーが砂嵐を鳴らした後に、声を通した。
「はいはい、二人とも落ち着いてね。とりあえず、その子を安全なところに移動ましょうね~。あの弾丸は貴重なんだからね~」
その声は魅惑的な大人を連想させるような凛々しい女性の声だった。
その声に答えるように、男二人はため息をついて、マティーニという男が彼女に話しかけた。
「さぁ、お嬢さん。移動しましょうか」
ヴァーレックを掴んでいた頭とは逆の手を、彼は差し出した。
よく見ると彼の両手には、腕にだけ機械での強化が施されていた。
恐る恐る少女が手を伸ばすと、再びトランシーバーが砂嵐を鳴らす。
「今、お嬢さんってきこえたんだけど、誰か呼んだ?」
今度の声は、アイドルのように可愛いく、女性と呼ぶにはまだ幼いような声だった。
「お嬢さんっていうのは、ベルモットが助けた女の子のことだ!それにお前を呼ぶならキティって呼ぶって決めただろ!」
トランシーバー越しに「あっ、そうだった」という声が聞こえた。
そのすぐ後に、モーターの回転音と何かを切断する音が入り混じった音をトランシーバーが通した。
ベルモットという男はまたため息をつき、少女に再び手を伸ばす。
その手に触れる前に少女は固く閉ざしていた口を開いた。
彼女はどうしても聞きたかったのだ。
「貴方たちは誰なんですか?」
泣きじゃくったためにかすれた声だったが、彼はしっかりと聞き取っていた。
彼はもう片方の手で頭を書いて、彼女の目を見て答えた。
「俺たちはALE、今のところ唯一ヴァーレックに勝てる....まぁ、ヒーローのようなもんだよ」
彼はそういって、いつまでも握ってくれない彼女の手を強引に握った。
作品名:ようこそ、Bar.Aleへ! 作家名:Liyon