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田舎のおこめ
田舎のおこめ
novelistID. 26644
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親子

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また、話せると思ってなかった。
次会う時は、あいつがエボンを終わらせて、『ザナルカンド』を終わらせて、シンを終わらせて・・・オレを終わらせる時だと思ってた。
神様ってのは救いのない絶望が好きなんだと思ってたが、なかなかどーして、粋な事もするじゃねーか。多分、意図してねーんだろうけどよぉ。
それでも、この世界でだけでもあいつと親子に戻れてくっちゃべったり出来る。
いぃじゃねーか。それだけで、この世界を守る価値があるってもんだ。

「よぉ泣き虫。ちったぁー俺様に付いてこれるようになったか?」
「ふっざけんな!いつまで子供扱いしてんだよ!今日こそぶっ飛ばしてやるからな!」
試合前のじゃれ合い。いつもの事だ。
ほんと、ちょーっとからかっただけですーぐムキになりやがる。くくく。
でも・・・泣き虫じゃぁ、ねぇな。
この世界は、2柱の神が作った世界。
その遺志を継いだ2柱が護っている世界。
ちょっと前に『次元食い』だかっていう大層な化け物から守るために、必死こいて戦ったもんだ。当然、俺様大活躍な大戦だったわけだ。
まあそんなこんなで、この世界には発展するだけのエネルギーが足りねぇ。
それを手助けしようってんで、たっくさんある世界からいろんな奴が呼び出されて戦ってるんだわ。
「おーおー、口だけは達者だねぇ。今まで10回くらいか?お前、1回も俺様を倒してねーだろ?」
「うっせぇ!だから今日、10回分ぶっ倒してやる!覚悟しろよ!」
「はっはっは!そりゃこえぇなぁ!さあ、存分にやろうぜ!」

どこからともなく頭に響く開始の合図。
合図と共に子は一直線に父に向かう。ビサイドの澄んだ砂浜を駆けて、一直線に。
【馬鹿だなぁ。そんなだからいつも俺様にやられんだよ。スピードに乗って切りかかろうってハラだろうが、付き合ってやる気はねーな。】
ぐっと、右腕に力をためる。
剣を振れば届く距離に近付く。しかし、腕に剣を弾いた感触はない。
「なっ!?」
「こっちだよ!!」
頭上から聞こえる声に思わず目を向けた。
「舐めてかかってんじゃねーぞ!」
言葉と共に急速に降下。遠慮のない一撃が襲う。
「はは!!ちったぁやるようになったじゃねーか!」
心の底から嬉しそうに笑う。この世界でしか交われない親子。その触れ合いを楽しむように。
「だが、まだ甘めぇ!」
一撃を弾く為に入れていた全身の力を緩め、瞬時に砂を蹴る。
「っち!」
砂に突き刺さる剣を睨み、舌打ち。
「なんだぁ?悔しがってる余裕があんのかぁ!?」
「なっ!?」
勢いを殺しきれずに、回避行動の取れない脇腹へ拳を振るう。
大気を震わせる音は、その威力を十分に誇示してみせた。
そのまま3発を食らわせ、吹っ飛ばす。
「おらぁ!どしたぁ!それで終わりかぁ!?」
鼓舞するように響く声に、相当に離れた距離から声が響く。
「ざっけんな!今日はぶっ飛ばすって言ってんだろ!」
砂に打ち付けられた体を翻し、ダメージを感じさせない足取りで再び迫る。
二人は睨み合い、そして笑った。
二人の距離が再び縮まりかけたその時、横やりがはいる。
「っ!?」
迫る業火に身をよじる。
「なーにを二人で遊んでらっしゃるのかしら?ワタクシを無視するとはいい度胸ですわね!」
金髪の幼女(?)が高らかに言い放ち、笑う。
「お前たちだけの戦ではない。さあ、陣形を組んでいこうではないか。」
気高く、ともすれば頑固に見える戦士が声をかけた。
「ファッファッファ。先走り追ってからに。まだまだ始まったばっかりであろう。」
妖艶でいて、不気味な雰囲気をまとう女が言う。
「はーはっは!良いぞ!良い闘争だ!我らも続こうでないか!」
重厚な鎧をまとう巨漢な男が争いを楽しむ。
「お互い、お仲間が集まっちまったな。とりあえず、仕切り直しといこうや!」
「逃げんなよ!絶対俺がぶっ倒してやるからな!」
親は思う。
なんと平和な『ぶっ倒してやる』だろうか。もしかして、あのまま夢の世界で暮らしていたらブリッツの試合でこんな場面があったのかもしれない。
無意味な妄想だろう。だが、思わずにはいられなかった。

段々やるようになってきてるじゃねぇか。
さすが、俺様の息子だけはあるな。
次はさらに強くなってんだろうなぁ。いいじゃねーか。
俺様の強さに限界なんかねーって事、教えてやらねぇとなぁ。
偉大なオヤジでいることも、楽じゃねーよなぁ。

これは、この世界だけの物語。
終わりでしか交わることのなかった、夢の世界の親子の物語。
親子は確かに、その絆を感じて闘争を繰り広げていた。
作品名:親子 作家名:田舎のおこめ