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『真夏日・カナのスクーター・廃工場の灰羽達』 【灰羽連盟】

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 ヒョウコがスクーターを押していき、そのあとにカナとミドリが続く。お互いの近況などを喋ったりしているうちに、カナは気が楽になってきた。スクーターが壊れて、自分ではどうすることもできなくて――さっきは本当に落ち込んでいたのだとカナは知った。
 街外れの工場地区の橋を渡り、廃工場に向かうあたりでようやく風が吹き始める。
「いい風」
 ミドリは目を細めて川の向こう、壁と空の境界あたりを見つめた。風の丘の風車も廻り始めただろうか。だとしたらオールドホームもしのぎやすくなるだろう。
 ミドリがカナのほうを見る。
「夜明けから暑かったじゃない。なもんでね、今朝は『眠いー』とか『暑いー』とか、みんなだるそうにしてた。あたしもそうだけどね。今夜も熱帯夜だったらどうしようかと思ったけど、とりあえず助かったわ」
「暑さ対策、しないとなあ。そうそう。こっちもさ、ラッカとヒカリがおんなじこと言ってたよ。『眠いー』とか『暑いー』とかって。寝ぼすけのネムが乗り移ったんじゃないかってくらい酷かった」
 自然と笑みがこぼれた。


 冬の頃はいろいろあった。
 レキが巣立ったあと、はじめて“罪憑き”のことを知った。カナもヒカリも愕然《がくぜん》とした。レキが時折見せていた陰のある表情は、それが原因だったのか。長いことオールドホームで生活を共にしてきたというのに、自分達はなにも知らなかった。なにもできなかった。一方、長いこと押し黙っていたネムの苦しみもいかばかりだったろうか。
 それでも。
 それでも各々が罪の輪の堂々巡りに陥らないように、“罪憑き”にならないように、灰羽の皆で支え合ってきた。
 そして今に繋がっている。こんなふうに笑えるように。