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『真夏日・カナのスクーター・廃工場の灰羽達』 【灰羽連盟】

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 カナはこれを着た時の自分の姿を想像してみた。うふふふと笑い、鼻歌を歌いながらどこかの花畑の中をスキップするショートヘアの少女。ピン留めなどするとより可憐な——

 ——いや!
「あり得ない! あたしがこれ着るなんて、絶対無理!」
 カナは少女めいた空想を打ち消して現実に戻る。そそくさとバスタオルを身体に巻き付けると、更衣室の扉を少し開け、ミドリの助けを呼んだ。
 すると、すぐそばに待機していたのか、ベレーを被った少女が姿を見せた。
「早いわね。どうしたの?」
「いやあのっ、ガレージに行くから作業しやすい服がいいんだ、けど……」
 それを聞いて彼女はさも残念そうに落ち込んでみせる。
「ええー? 着てくれないの、カナ? 絶対可愛いのにー」
 彼女は上目遣いでカナを見つめる。健気な仕草だ。カナは情にほだされそうになるが——
(だまされるな! これは罠だ! あたしの女の勘がそう言ってる!)
「ごめん、つなぎでいいんだ。すぐ行かないといけないんで……ね?」
 手を合わせ、申し訳なさそうにカナが言うと、彼女はすぐ涼しげな表情に戻る。今し方のは演技だったのか。
「ふう。分かったわ。じゃあちょっと待ってて」
「頼むよ……」心の中で泣きながらカナは言った。
 少女は立ち止まると振り向いた。
「でも、本当に残念」
 クスッと笑い、また歩き出す。

「女って怖いなあ」
 はぁっ……。
 カナはひとり、更衣室で安堵のため息をついた。ヒカリにしてもミドリにしても、さらにここの子達にしても。どうして女の子女の子した服を自分に着せようとするんだろうか。しかも生き生きした表情を浮かべて!
 頭を抱え込む。
 ふと、閃く。
 もしかしてもしかすると。ああいう服を着こなしてみせることこそが、カナの灰羽としての試練なのではないか——?
 カナはぶんぶんと首を振って、空恐ろしい想像を否定した。