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Never end.3

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Never end.3


ネオ・ジオンとの抗争も佳境に入り、ジュドー達も幾多の戦闘を乗り越え、一人前のパイロットに成長してきた。
アムロはディジェの整備をしながら、今後の自分の身の振り方を考える。
指導者たるクワトロ・バジーナ大尉を失った今、この抗争が落ち着けば、おそらくエゥーゴは正規部隊として連邦に吸収される。
そうなると、シャイアンを脱走した自分は、脱走兵として何らかの処罰を受ける事になるだろう。
それは覚悟の上だが、拘束されるのはごめんだ。
いずれシャアは事を起こす。その前にシャアを探し出さなければ。
「はぁ」
コックピットの床に座り込み、大きなため息を吐く。
「でっかい溜め息ですね」
開いたコックピットの入り口から、クスクス笑いながらアストナージが顔を出す。
「アストナージか、どうした?」
「艦長が呼んでます。そこのデッキの上にいるんで行ってください」
「ブライトがここに?珍しいな」
「そうですね、急用ですかね」
「さぁな。ありがとう、行ってくる」
アストナージに工具を預けて、アムロはコックピットから出ると、ワイヤーガンを使ってブライトの元まで飛んで行く。
ドックのキャットウォークの柵にもたれて、ドックを見下ろすブライトの隣に飛び降りると、グローブを外しながらブライトに尋ねる。
「どうしたんだ?ブライトがドックに顔を出すなんて珍しいな」
「お前を態々呼び出すのもどうかと思ってな。見回りも兼ねて来たんだ」
「ははは、みんな突然の艦長の来訪にびっくりしてるよ」
「多少は気持ちが引き締まるだろ?」
皮肉な笑みを浮かべるブライトに「違いない」とアムロが笑って答える。
「それで、要件は?」
「ああ、今後の事なんだがな」
「今後?」
「まだ気が早いかもしれんが、この抗争の片がついたら、お前は一旦エゥーゴを離れろ」
「え?」
「お前の籍はまだカラバのままだ、だからお前がエゥーゴから離脱したところで、データ上は何の問題もない」
ブライトはいつでもアムロがエゥーゴから離脱出来るように、カラバからの移籍手続きをしていなかった。
あくまでカラバからの派遣兵という扱いの為、エゥーゴから離脱しても軍籍データ上は問題ない。
つまり連邦にエゥーゴが吸収されても、連邦軍に戻る必要はないのだ。
「ブライト…すまない。ありがとう」
「元々そういう約束だ。ガンダムチームが一人前になり、この抗争が落ち着いたらシャアの捜索に出ても良いと」
「それはそうだが…」
「脱走罪についてはどうとでもなる。まぁ、減給くらいの事はあるかもしれんがな」
「そんな事…」
ホッとするアムロの肩をポンと叩き、「心配するな」とブライトが微笑む。
「ありがとう。助かるよ」
それからブライトは、視線を彷徨わせ、少し思案した後、意を決してもう一つの話題をアムロに振る。
「アムロ…プルの事なんだがな」
「プル?」
プルは先日、作戦で地球に降下した際、敵との交戦で怪我をした。
その時の交戦相手が、自分と同じデザイナーズチャイルドだと言っていた。
それはつまり、プルと同じ様に遺伝子レベルで“設計”され、人工的に創り出されたニュータイプの子供が他にもいるという事だ。
プルは他の強化人間の様に薬物投与などの強化措置をしなくとも、ニュータイプの様にサイコミュのプレッシャーを受けずにモビルスーツを操る事ができる。
そんな子供がまだいると言うのだ。
彼女達はオールドタイプのパイロット数人、否、数十人分もの戦力を持っている。
しかし、プルの戦いを見る限り、能力は有るが、メンタル面は不安定だ。
他の強化人間に比べれば安定しているが、何よりもまだ“子供”なのだ。
そんな子供が、大人の思惑に操られて最前線で戦わされる。
そして、“そう”プログラムされた彼女たちは、その事に疑問すら感じない。
あまりにも哀しい存在なのだ。
そして、その彼女たちのベースとなったのは…。
「お前、あの子の事をどう思う?」
「プルの事?」
「エルが言っていたんだが…お前に少し似ているそうだ」
「俺に?」
ララァの気配は感じるが、自分と似ているなどとは思っていなかった。
ただ、ニュータイプにかなり近い強化人間だからか、自分と同じように、色々なことを感じているとは思っていた。
そしてふと思い出す。
自身がオーガスタ研究所で被験体となっている時、ジオン訛りのある研究者いなかったかと。
度重なる容赦の無い実験で、意識は朦朧としていたが確かに聞こえた。
俺の肉を切り裂き、血や精液を採取しながらクローンがどうとか、言っていなかったか?
そこまで考えて、アムロはハッとする。
「まさか…俺の遺伝子データもプルには組み込まれているのか?」
震える声を必死に抑えようとするが、どうにも出来ず、恐る恐る確認する。
「それは分からん。しかし、ジオンのフラナガン機関が、連邦に接収されていた事は事実だ」
「フラナガン機関…」
アムロは込み上げる吐き気を抑えるように、手で口元を覆う。
そして、実験の光景がフラッシュバックする。
手足を拘束された状態で薬物を注射され、電流が流される。
何度も繰り返される戦場での辛い記憶。
どんなに“嫌だ”と“痛い”と泣き叫んでも、誰一人助けてはくれなかった。
「大丈夫か?アムロ」
顔を真っ青にして震えるアムロを、ブライトが支える。
「……嫌だ…もうやめて…」
「アムロ?」
「僕は人間だ…バケモノじゃない…僕は…」
目の焦点が合わず、虚ろになったアムロが、呟く。
「アムロ!」
ブライトの声に、ガクガクと身体を震わせながら、縋るような視線を向ける。
「…助けて…」
そう言った瞬間、フューという呼吸音と共にアムロが苦しみだす。
「かっはっ」
「アムロ!」
慌てるブライトの元に、ビニール袋を持ったジュドーが駆け寄る。
「艦長!退いて!」
ジュドーはアムロの口元に袋を当てて呼吸をさせる。
「大尉!ゆっくり呼吸して!」
なんとか落ち着いたアムロだったが、そのまま気を失ってしまった。
「アムロ!」
「大丈夫、過呼吸を起こしただけだから」
「ジュドー…」
「一時期リィナが同じ症状を繰り返しててさ、こうやって呼吸を制限してやれば落ち着くんだ」
「…そうか…ありがとう」
「いえ、それよりアムロ大尉…どうしてこんな事に?」
「いや、ちょっとな…」
ニュータイプ研究所での事を思い出してしまったのだろうと察し、ブライトが眉を顰める。
あの戦場をも生き残ったアムロが、ここまで怯える様な酷い事がニュータイプ研究所では行われていたのだ。
ブライトは気を失ったアムロを抱きかかえて、悲痛な表情を浮かべる。
「ジュドー。悪いがアムロを医務室に運ぶのを手伝ってくれんか?」
「はい、分かりました」
二人はアムロの肩を抱えて医務室へと向かった。
「そういえば、艦長。アムロ大尉、最近よく眠れてないのかな?」
「どうしてだ?」
「ん…、最近よく居眠りしてるトコ見るんで」
「居眠り?」
「もちろん勤務中はそんな事ないんだけど、休憩中とか、フリールームで」
「そういえば…そうだな」
一悶着あってから、アムロは前のような無理をする事なく、キチンと休息を取っていた。
それなのに、よく居眠りをしている。
「その辺りもハサンに診てもらうか」
作品名:Never end.3 作家名:koyuho