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ディアブロスプリキュア!

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私立シュヴァルツ学園 二年C組

 始業式が終わり、クラス替え後ということで行われた各自の自己紹介も終わって、今は休憩時間を迎えていた。
 自己紹介では、皆が好きなことや趣味の話、今年の意気込みなどを展開する中で、
「悪原リリスです。よろしくお願いします」
 とたった二言で終わらせたリリスの自己紹介では三枝が何か言いたげにしていたが、先の毒舌を食らっていたせいか、小さく「じゃあ、次……」と言ってうなだれていた姿が、C組の生徒全員の思い出の一ページとして心に深く残った。
 リリスは休憩時間を自席で座って過ごすことが多かった。わざわざクラスメイトと親睦を深める必要性を感じていなかったからだ。昨日のドラマの俳優がかっこよかったとか、新しく出た漫画がどうだとか、どこそこのスイーツ店に行列ができているなど、そんな世俗の話で貴重な休みを費やすのが心底バカらしいと考えているというのも理由の一つである。
 しかし、そんな冷淡な彼女であるが、入学当初より生徒はおろか教師からも一目置かれる存在であった。
 まず、リリスは何事においても手は抜かない。学校における国語や数学といった座学はもちろんのこと、家庭科や体育といった実技を伴った授業もそつなくこなしてみせる。
 国語で音読を当てられれば、誰もが聞き惚れるような透き通った声で物語を奏でるし、数学ではまるで模範解答のようにきれいに答えを導き出す。
 体育で走れば韋駄天のように地面を駆け抜ける。その姿には男女関係なく見入ってしまい、一瞬遅れて歓声が沸き上がる。タイムも女子中学生の中ではトップ層に入れるだろう早さをたたき出し、唖然とした記録係がストップウォッチを止めるのを忘れてしまうほどだった。
 家庭科では裁縫から調理実習まで先生の指導を受けるまでもなくこなしてしまう。時には先生からお手本としてリリスの制作物が展示されることもあった。
 調理実習のときは、リリスがいることに甘えた男子がリリスに自分の担当分を任せようとして、
『なぜ学校で調理実習をやるのかわからないの? そんなこともわからないくらい愚かなの? こういうものは自分でやって初めて糧になるものよ。それがわからないのならあなたに食べさせる料理などないわ』
 とこっぴどく怒られたものだが、その言葉に感銘を抱いた他の生徒はもちろん、言われた当人も「すみませんでした! 俺が甘えていました!!」と心を入れ替えて実習に励んだものだ。
 こういった歯に衣着せない物言いは、老若男女関係なく、彼女の人気を高める一因となっている。この年頃の子どもは、反抗されると対抗してしまいたくなるものだが、殊にリリスに対しては、彼女が吐く言葉が正論であることに加え、容姿端麗な美少女であるが故に皆納得してしまうのであった。
 だが同時に、それは彼女にどこか近寄りがたい雰囲気を出させてしまっているのも確かであった。
 今も席に座り読書に耽るリリスに羨望や憧れの眼差しを投げかけはするものの、近づこうとする者はいなかった。
 かつては一種の度胸試しのようにリリスに声をかけてくる者がいたが、皆あえなく撃沈した。やがて繰り返すうちに今のように、ただ皆が憧れる麗しき孤高のお嬢様、といった立ち位置を獲得したのだった。
 リリス自身も視線は感じていたが、それを気にすることはなく、かえって誰も近づいてこなくなったことで気が楽になった。
 ――ただし、そんな近寄りがたきお嬢様に物怖じしない例外がただ一人存在した。
「リリスちゃん! 聞いて下さい!!」
 勢いよく教室のドアが開かれると同時に幼馴染みの少女・天城はるかが駆け寄ってくる。
「何よ、騒々しい。まずは深呼吸をしなさい」
 リリスは読んでいた本を閉じ、はるかに向き直って静かに言葉をこぼした。
 リリスに言われてその場で大きく深呼吸をしたはるかは、乱れていた呼吸が落ち着いてきたところで話を続ける。
「それがですね、次の時間は学級委員を決めるらしいんですよ! リリスちゃんは何か委員やらないんですか?」
「今まで私が委員会なんてやった試しがある?」
 冷たく言い放つとはるかは、ですよねー、という顔をして、
「リリスちゃんはもう少し学生生活を充実させた方がよいのではないですか?」
「いつも言っているでしょ。無駄なことはしたくないの」
「委員会活動は無駄にはならないと思うんですけどねー……」
 これ以上の問答はリリスの機嫌を損ねるかと思った直後、ふとリリスの手元に目がいった。
「ところで、リリスちゃんはさっきから何を読んでいるんですか?」 
「何だと思う?」
  リリスが問うと、はるかは頭をかしげて考える。
「ん~っと……あ! わかりました、シェイクスピアさんもしくは夏目漱石さんですね!」
はるかが目を輝かせていうと、リリスは小さく首を振って正解を答える。
「ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』」
「ハヒ! なんだかまた難しいそうなものを読んでいらっしゃるんですね……」
「カール・マルクスの『資本論』も読み応えがあっていいわよ。これを読んだ後に『21世紀の資本論』を読むと両者の相対関係がはっきり比較できるわね」
リリスは淡々と意見を述べるが、はるかの頭にはちんぷんかんぷんだった。
「ですからリリスちゃん……どれもこれも十四歳の中学生の読みものじゃないと思います!」

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