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鳥籠の番(つがい) 1

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そして、はっきりとその顔が確認できた瞬間、ビクリと大きく痙攣して呻き声が止む。
「…アムロ?」
先程までの苦しみが嘘のように治まり、呼吸だけが荒々しく繰り返される。
シャアが心配気にアムロの顔を覗き込むと、アムロの耳元のスピーカーからナナイの声が響いてくる。
〈No.A-001 目を開けなさい〉
その声に反応するように、アムロの琥珀色の瞳が開かれ、目の前のシャアを視認する。
〈No.A-001 今、貴方の目の前に居るのが貴方のマスター 、シャア・アズナブルです〉
「マ…スター、シャア…・アズナブル…」
アムロがゆっくりと唇を動かし、ナナイの言葉を復唱する。
「シャ…ア…」
〈そうです。しっかりとその顔を視認し、眼に焼き付けなさい〉
アムロは真っ直ぐにシャアの顔を見つめ、インプットするように凝視する。
「シャア・アズナブル…俺の…マスター…」
〈No.A-001 貴方のマスターは目の前のシャア・アズナブルただ一人。何があってもその命令に従い、尽くしなさい〉
「マスター…命令…従う…何が…あっても…」
そこまで呟くと、アムロの身体からガクリと力が抜け、気を失ってしまった。
「アムロ!?」
シャアはただ、その光景を呆然と見ている事しか出来なかった。そして、処置が完了したのか、端末から手を離したナナイがシャアに視線を向ける。
「ナナイ…」
「大佐、マスター登録処置完了です」
その言葉に、シャアはただ目を見開き、その事実に愕然とする。


別室に移動し、シャアはナナイに詰め寄る。
「ナナイ、どう言う事だ」
「始めに申し上げておきます。ここに来た時点で、アムロ・レイは既に連邦のニュータイプ研究所によりマスター登録直前の状態まで強化されておりました」
「アムロは連邦から脱走してカラバで活動していた筈だ…それが何故ニュータイプ研究所に?」
「報告では、カラバで活動中に味方を庇って負傷し、病院で処置を受けていた際、連邦に脱走兵として拘束され、そのままニュータイプ研究所に収監されたそうです」
「アムロがそんなに簡単に拘束されるとは思えん。どの程度の怪我だったのだ?」
「怪我自体は骨折程度でしたが、仲間を人質に取られていたようです」
シャアは眉を顰め小さく舌打ちする。
「しかし、何故こんな騙し討ちのようなやり方で私をマスターにした?」
シャアの問いに、ナナイは目を閉じて息を整えると、シャアの青い瞳を真っ直ぐに見据える。
「かなりキツイ強化を受けていたアムロ・レイは、精神崩壊寸前でした。その為、直ぐにでもマスター登録をして安定させる必要がありました」
「しかし、私に一言あってもいいだろう?」
シャアのその言葉に、ナナイはキツイ視線を向ける。
「事前に確認して、大佐は受け入れましたか?」
ナナイの問いに、シャアは思わず息を飲む。
確かに、事前に確認をされたら受け入れられなかったかもしれない。
アムロを同志にとは思った事はあるが、自分に絶対服従の人形にするつもりは無かった。
あくまで対等な立場で横に立って欲しかったのだ。
「受け入れることは…出来なかったな」
「それでは、他の誰かのモノにしても良かったのですか?」
それを言われれば、間違いなく「No」だ。
アムロが誰かのモノになるなど考えられない。
「良くは…ないな」
「しかし、誰かをマスターにする必要がありました」
「……」
「それならば、大佐がマスターになるべきだと私は思い、今回このような方法を取らせて頂きました」
ナナイの判断は間違っていない。
おそらくナナイとしても、連邦のパイロットであり、シャアの積年のライバルである男をネオ・ジオンに取り込む事にはかなりの抵抗があっただろう。
しかし、戦力面で考えれば、最高のニュータイプであり、最強のパイロットのアムロ・レイを自軍に引き入れる事が出来れば、戦局は大きく好転する。
それは、かつて一年戦争でのアムロ・レイの活躍と実績で実証されているのだから。
「……そうか、…そうだな…」
シャアとてそれは理解している。
しかし、感情がついていかないのだ。
「…アムロは…過去の記憶を持っているか?」
「いいえ、他の強化人間同様、記憶操作がされており、過去の記憶は封印されています」
「だろうな…でなければ、私をマスターになど出来んだろうからな」
目を伏せ、シャアが自嘲気味に呟くのを、ナナイは無言で見つめた。


to be continued...



作品名:鳥籠の番(つがい) 1 作家名:koyuho