はじまりのあの日15 バレンタインとリップサイン1
わたし達が、暮らす土地のお菓子屋さん。明日から三日の間、ケーキの特売を行なうという。TVから、聞こえるコマーシャル。ケーキと言えば、誕生日やクリスマス。でも、わたし達、メンバーの中ではあの日のイメージも強いんだよね。画面に写し出される、ブッシュ・ド・ノエル。また丁度良く、招かれてしまう。記憶の図書館に。あの日、彼が作ってきてくれた、チョコレートの大木。メンバーのチョコレート交換日。14歳、正式なバレンタインデーの五日日後。スケジュールを合わせ、メンバーだけのバレンタインをするあの日。図書館の扉を軋ませ、わたしはあの日へ降りてゆく―
「楽しみだよな~、今日。おにぃど~んなスイーツ作ってくれんだろ~」
メンバー全員。一週間、糖質とカロリーを制限。走り込みの量も増やす。特に、神威道場もハードメニューになるので、始めたばかりのレンは、重度の筋肉痛に苦しんでいた。全員3㎏は減量して迎えるバレンタイン。シェアハウスへ集合した女性陣
「少しは、男衆にサプライズしたいじゃないの」
と、めー姉の発案で。前日、彼曰くの『お嬢組』一同で買いに行ったチョコレート。それぞれ、送る相手を確認する。女性陣だけで交わされた会話。全員同じってわけにはいかない。やっぱり、贈る人の事を想うと、好みや見た目、味を気にかける。レン、ピコ君、勇馬兄、キヨテル先生は、アル兄の運転でショッピングモールへ。朝早くから、チョコやお総菜の買い出し。交換用のチョコの調達。天使様は、朝から神威の家。紫の彼を『手伝っている』のだと思っていた、この時点では。マンションではカイ兄がこれまた、早朝から、腕を振るっていた
「だけど、情けないよね~うちら。アニキ様二人のスイーツに腰、ひけてさ。チョコ作れないってど~なのかね~」
「だって、カナワナイもんね~。でも、何だかんだで幸せだよ~。タダで、美味しいスイーツ食べほ~だい」
苦笑いでMikiちゃん、こめかみを掻く。ミク姉は楽しげに身体をゆらす。そうなのだ。紫の彼が、ケーキを作ってくれたあの日以来。カイ兄も、スイーツを作ってくれるようになった。そして、完全に甘味の祭典と化した、メンバーのバレンタイン。二人の三つ星パティシエールが作ってくれるスイーツ。それに腰が退けて、作ることが出来ないのだ。ちなみに、お菓子作りに専念してほしいので、二人はチョコ免除。作ってくれるスイーツで充分なので。贈り合うメンバーも増えた。作るお菓子に集中させてあげたい。ただし、半分は『自分たちの都合』でもある。だって、美味しいお菓子が食べたいもの
「ま、贈る心よ。アタシは料理系、そこまで得意じゃないし。だからカイト、料理上手になってくれたのよ。感謝と愛では誰にも負けないわよ。アタシのカイトにはと・く・に」
左手を腰に当て、右手は人差し指を立てる。小首をかしげ、ウインクのめー姉
「ゎゎゎ~あ、おのろけですね~、め~こさ~ん。なんだか萌え萌え~」
「あ、そっか、カイトは、メー姉のために料理スキル磨いたんだ~。ラブラブじゃん。ま、家族のためっつ~のもあんだろ~けどさ」
お惚気にときめくIA姉とリリ姉、めー姉
「嬉しかったわぁ、はじめの頃~。仕事少なかったけどね、遅くなった日とかね、帰ってくると『用意してあげる』って。作ってくれたわ、夜食」
「わたしも~。カイ兄、いっつもご飯作ってくれた~」
思い出を膨らませる、姉二人。わたしも同様、兄のご飯に育ててもらった一人だ
「美味しいご飯、カイ兄にありがとうだねっ。がっくんもっ、いつもご飯、作ってくれて。今日スイーツパーティーできるのも、二人のおかげ~」
「へっ。ボクは、初めてコレをやった日、忘れられていたぜ」
不満げなのはテト姉、ヤンキー座りになる。そう、あの日、気まぐれに帰省していたため。メンバー全員、綺麗さっぱり忘れていた
「ごめんてば、アネキ。だって、メモ一枚で帰っちゃうんだもの。それに、神威君。アネキにチョコ作ってくれてたじゃない」
帰ってきて、皮肉を言うテト姉に、チョコラスクを渡していた彼。ちなみにテト姉、ちゃっかり自分にもご褒美チョコを買っている。あの日も今日も。やや高級な物を
「いきなり帰る。テト様、めっ」
「ぐおお~、カルたんにも怒られた~。完全にボクが悪いじゃね~か、うお~」
頭を抱えるテト姉
「奔放すぎるのもいけませんわ。その報いです」
ルカ姉がトドメを差す。小石を蹴る動作でいじけるテト姉。今度は慰めるめー姉。シェアハウスに来るのは、完成後の見学会以来。マンション、その次に神威家。集まることが多い順。全員集合で騒げる、広い空間があるから。と言って、けして狭くないリビングスペースは木目調。そこに、決まり事や、掃除当番表などが貼られている。見学会の時には無かった、生活感。なんだかそれが、とても良い。オモシロイのは『家長より今月の一言』という掲示板
「アルのだんながね~、考えたんだ~。キヨテル先生から一言って~」
さっき、IA姉が説明してくれた。今月の一言は『甘い物の取り過ぎに注意しましょう』その前で、大量のチョコを見せ広げ。尚のこと可笑しい
「チョコ贈りあう人も増えたよね。でも『特別』チョコ贈っちゃう人もいるのかな。わたしは、ぽ兄ちゃんには『特別』かな~」
「おねぇ、ブラコン極めてるな~。ダイジョブかこれ~」
乙女モードのめぐ姉を、苦笑いで見つめるリリ姉。でも、紫の彼とめぐ姉『いろいろな意味』で『こじれた』ことはない。はずである
「あら、リリちゃんは卒業したの、ブラコン」
チョコを、一纏めにして、袋に詰める。イタズラっぽく聞く、めー姉
「うんにゃ~全然。ウチもきっと一生ブラコンだわ。ぶっちゃけ、兄妹弟(きょうだい)全員好きだし。こんな最高のおにねえ(おにぃ、おねぇ)居ねえわ。でも、それとは違う格好良さとかあんじゃん。素敵な人~とか~」
「かるも、きっとずっとぶらこん。合わせ技でしすこん。あにさま、あねさま、りゅ~ちゃんイエイ」
豪快に笑うリリ姉。その頬が僅かに赤い。サムズアップ、珍しいリアクションのカル姉
「あら、リリィさんにも居ますのね、そんな方が」
「へへっ、ま~ね、ルカ。秘密だ・け・ど~」
「わ~、ちょっと気になっちゃうな~」
『も』を強めに言う、ルカ姉。リリ姉共々、頬を染める。無邪気にミク姉、女子トーク。本日、わたし達はお揃いのワイシャツに前開きセーター、ラッフルスカート。首元には、色違いのリボン。何となく『中高生』に見えてしまうルック。女学生が集まった感。男性陣は、お揃いのワイシャツに前開きセーター、スラックスだった。やっぱり中高生的。こういう『お揃い』をたまにやる、仲良しメンバー。前日に話し合って。ただ、ピコ君は女性陣とお揃い。まあ、わたしと弟は、リアル中学生だったけど
「リンちゃんは、誰かにあげるのかな~あっ『特別』チョコ」
やや、イタズラッ子モードのMikiちゃん。その眼差しは、ちょっとだけ引っかかったけど、問いかけに
「ん~がっくん。いっつも優しくしてくれる感謝もこめて」
「楽しみだよな~、今日。おにぃど~んなスイーツ作ってくれんだろ~」
メンバー全員。一週間、糖質とカロリーを制限。走り込みの量も増やす。特に、神威道場もハードメニューになるので、始めたばかりのレンは、重度の筋肉痛に苦しんでいた。全員3㎏は減量して迎えるバレンタイン。シェアハウスへ集合した女性陣
「少しは、男衆にサプライズしたいじゃないの」
と、めー姉の発案で。前日、彼曰くの『お嬢組』一同で買いに行ったチョコレート。それぞれ、送る相手を確認する。女性陣だけで交わされた会話。全員同じってわけにはいかない。やっぱり、贈る人の事を想うと、好みや見た目、味を気にかける。レン、ピコ君、勇馬兄、キヨテル先生は、アル兄の運転でショッピングモールへ。朝早くから、チョコやお総菜の買い出し。交換用のチョコの調達。天使様は、朝から神威の家。紫の彼を『手伝っている』のだと思っていた、この時点では。マンションではカイ兄がこれまた、早朝から、腕を振るっていた
「だけど、情けないよね~うちら。アニキ様二人のスイーツに腰、ひけてさ。チョコ作れないってど~なのかね~」
「だって、カナワナイもんね~。でも、何だかんだで幸せだよ~。タダで、美味しいスイーツ食べほ~だい」
苦笑いでMikiちゃん、こめかみを掻く。ミク姉は楽しげに身体をゆらす。そうなのだ。紫の彼が、ケーキを作ってくれたあの日以来。カイ兄も、スイーツを作ってくれるようになった。そして、完全に甘味の祭典と化した、メンバーのバレンタイン。二人の三つ星パティシエールが作ってくれるスイーツ。それに腰が退けて、作ることが出来ないのだ。ちなみに、お菓子作りに専念してほしいので、二人はチョコ免除。作ってくれるスイーツで充分なので。贈り合うメンバーも増えた。作るお菓子に集中させてあげたい。ただし、半分は『自分たちの都合』でもある。だって、美味しいお菓子が食べたいもの
「ま、贈る心よ。アタシは料理系、そこまで得意じゃないし。だからカイト、料理上手になってくれたのよ。感謝と愛では誰にも負けないわよ。アタシのカイトにはと・く・に」
左手を腰に当て、右手は人差し指を立てる。小首をかしげ、ウインクのめー姉
「ゎゎゎ~あ、おのろけですね~、め~こさ~ん。なんだか萌え萌え~」
「あ、そっか、カイトは、メー姉のために料理スキル磨いたんだ~。ラブラブじゃん。ま、家族のためっつ~のもあんだろ~けどさ」
お惚気にときめくIA姉とリリ姉、めー姉
「嬉しかったわぁ、はじめの頃~。仕事少なかったけどね、遅くなった日とかね、帰ってくると『用意してあげる』って。作ってくれたわ、夜食」
「わたしも~。カイ兄、いっつもご飯作ってくれた~」
思い出を膨らませる、姉二人。わたしも同様、兄のご飯に育ててもらった一人だ
「美味しいご飯、カイ兄にありがとうだねっ。がっくんもっ、いつもご飯、作ってくれて。今日スイーツパーティーできるのも、二人のおかげ~」
「へっ。ボクは、初めてコレをやった日、忘れられていたぜ」
不満げなのはテト姉、ヤンキー座りになる。そう、あの日、気まぐれに帰省していたため。メンバー全員、綺麗さっぱり忘れていた
「ごめんてば、アネキ。だって、メモ一枚で帰っちゃうんだもの。それに、神威君。アネキにチョコ作ってくれてたじゃない」
帰ってきて、皮肉を言うテト姉に、チョコラスクを渡していた彼。ちなみにテト姉、ちゃっかり自分にもご褒美チョコを買っている。あの日も今日も。やや高級な物を
「いきなり帰る。テト様、めっ」
「ぐおお~、カルたんにも怒られた~。完全にボクが悪いじゃね~か、うお~」
頭を抱えるテト姉
「奔放すぎるのもいけませんわ。その報いです」
ルカ姉がトドメを差す。小石を蹴る動作でいじけるテト姉。今度は慰めるめー姉。シェアハウスに来るのは、完成後の見学会以来。マンション、その次に神威家。集まることが多い順。全員集合で騒げる、広い空間があるから。と言って、けして狭くないリビングスペースは木目調。そこに、決まり事や、掃除当番表などが貼られている。見学会の時には無かった、生活感。なんだかそれが、とても良い。オモシロイのは『家長より今月の一言』という掲示板
「アルのだんながね~、考えたんだ~。キヨテル先生から一言って~」
さっき、IA姉が説明してくれた。今月の一言は『甘い物の取り過ぎに注意しましょう』その前で、大量のチョコを見せ広げ。尚のこと可笑しい
「チョコ贈りあう人も増えたよね。でも『特別』チョコ贈っちゃう人もいるのかな。わたしは、ぽ兄ちゃんには『特別』かな~」
「おねぇ、ブラコン極めてるな~。ダイジョブかこれ~」
乙女モードのめぐ姉を、苦笑いで見つめるリリ姉。でも、紫の彼とめぐ姉『いろいろな意味』で『こじれた』ことはない。はずである
「あら、リリちゃんは卒業したの、ブラコン」
チョコを、一纏めにして、袋に詰める。イタズラっぽく聞く、めー姉
「うんにゃ~全然。ウチもきっと一生ブラコンだわ。ぶっちゃけ、兄妹弟(きょうだい)全員好きだし。こんな最高のおにねえ(おにぃ、おねぇ)居ねえわ。でも、それとは違う格好良さとかあんじゃん。素敵な人~とか~」
「かるも、きっとずっとぶらこん。合わせ技でしすこん。あにさま、あねさま、りゅ~ちゃんイエイ」
豪快に笑うリリ姉。その頬が僅かに赤い。サムズアップ、珍しいリアクションのカル姉
「あら、リリィさんにも居ますのね、そんな方が」
「へへっ、ま~ね、ルカ。秘密だ・け・ど~」
「わ~、ちょっと気になっちゃうな~」
『も』を強めに言う、ルカ姉。リリ姉共々、頬を染める。無邪気にミク姉、女子トーク。本日、わたし達はお揃いのワイシャツに前開きセーター、ラッフルスカート。首元には、色違いのリボン。何となく『中高生』に見えてしまうルック。女学生が集まった感。男性陣は、お揃いのワイシャツに前開きセーター、スラックスだった。やっぱり中高生的。こういう『お揃い』をたまにやる、仲良しメンバー。前日に話し合って。ただ、ピコ君は女性陣とお揃い。まあ、わたしと弟は、リアル中学生だったけど
「リンちゃんは、誰かにあげるのかな~あっ『特別』チョコ」
やや、イタズラッ子モードのMikiちゃん。その眼差しは、ちょっとだけ引っかかったけど、問いかけに
「ん~がっくん。いっつも優しくしてくれる感謝もこめて」
作品名:はじまりのあの日15 バレンタインとリップサイン1 作家名:代打の代打