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はじまりのあの日15 バレンタインとリップサイン1

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「あ、リンちゃん、それならお化粧、してみないカナぁ」

めぐ姉『妙案』との顔つき。京の都から帰って、結局忙しさで有耶無耶になっていたメイク術

「ちょっとおめかししてね、ぽ兄ちゃんに渡すの、チョコレート」
「ゎ、グミちゃんナイスアイディア~。リンちゃん、お化粧しようよ~ぅ」
「まぁ、素敵な提案ですわぁ、グミさん。お化粧してみませんか、リンちゃん」

素晴らしい提案を受けるわたし。IA姉、ルカ姉、楽しげに聞いてくる。ただ

「ん、ぅん~、ちょっと恐いカモ。がっくん、どう思うかなぁ」

急な変化に気が引ける。化粧をした自分を、どう観てくれるかが、やや恐い。と言うか、彼の名前が自然に出てくる辺りで、何故気付かない

「大丈夫、凄いお化粧はしないからっ。今日みんなお化粧してるけど、そんなに濃いメイクしてないでしょ」
「あ、そうなんだ、気付かなかったぁ」

めぐ姉、子供のように楽しそう。きっとこれも『応援』の一つだったんだろうけど、あの日は全く気付いていない。女性陣、確かに常日頃お化粧するけれど、普段のそれは極薄いもの。化粧するようになって、メイクの有無に気付いたっけ

「良いと思うわよ、リン。この機会にしてみたらぁ。バレンタインデーに、大人への・だ・い・いっ・ぽっ(第一歩)ぅふふふ、素敵な展開ねぇ」

ルカ姉よろしく、妖艶に微笑むめー姉。頬に手を当て、わたしを見つめ、変化を後押し

「ん~、じゃあしてみようかなぁ、お化粧。あ、でも、イキナリはできないかな、難しそ~う」

その、めー姉の言葉、わたし勇気を出す。大人への変化、第一歩。めぐ姉の歓声と、ルカ姉の笑み。みんなが、楽しそうにわたしの周りに寄ってくる

「大丈夫ですわ、今日はワタシが施して差し上げます。これから、少しずつ教えて差し上げますわ。どの様なMakeにいたしましょう、グミさん」

形の良い顎に人差し指をあて、思案顔のルカ姉。微笑みは絶やさない。めぐ姉も笑顔のまま

「今日するメイクが、重要だねっ、ルカちゃん。リンちゃんの初メイク、ど~しよっかなあ。似合うメイクで、お化粧道具も揃えてあげるね、リンちゃん」

後日、言葉通り、日常メイクの道具、姉達によって揃えて貰うわたし。本当の姉妹以上に優しくして貰う『妹』のわたし

「かる、ていあん」

カル姉、手を上げ一歩前へ出る

「素朴めいくがいい。りんりん、お肌すっべすべ。生かさないともったいない、ない、もったいな~い」

言って、フィギュアスケート選手のように一回転するカル姉

「ゎたしも同じ意見~。リンちゃんのほっぺ、お餅みたい。すべすべぷにぷに、おもち、もちもち~」

わたしの頬を両手で包むIA姉。もちもちと挟まれて、すりすりされる。ああ気持ちいい

「アイラインとリップでいいんじゃね。ファンデ、シャドウは要らね~と思う。ウチは、してるけどさ、アイシャドウ。ユニ(ユニフォーム)から習慣みたくなちまったから」

リリ姉にものぞき込まれる。わたし、姉達にされるがまま。それが非常に心地良い

「リリね~さんに、うち賛成。どっちもバッチリしなくて良いと思う~。リップの色は、ルカね~さんの髪の色くらいのがいいかなぁ」

言って、ルカ姉の綺麗な髪に、指を絡めるMikiちゃん

「それは、Mikiさんも同じくらいの色ですわ。髪の毛の色。うふふ、綺麗な髪ですね」
「る、ルカね~さんのが綺麗だよぉぅ」

振り向いて、やっぱりMikiちゃんの髪を撫でるルカ姉。妖艶なルカ姉に、照れるMikiちゃん。ちょっとだけ『百合』な構図。ルカ姉、Mikiちゃん、同じく綺麗な薄桃の髪。Mikiちゃんの方が、やや濃いめの色味

「マスカラも要らないわね、普段はアタシもつかわない。あ、でも、ビューラーでまつげは整えようかしら。さてリン、始めるわよ~」
「リンちゃんのお化粧デビュー、動画残しておかなきゃっ」
「お化粧道具、ゎたしので良いかな~、リンちゃ~ん」

めー姉に、ヘアピン、リボンを外される。ルカ姉、自分が着けていたカチューシャを外し、わたしの髪を上げてくれる。オデコまるだし。スマホで撮影をはじめる、いつものミク姉

「うん、IA姉、ありがと~」
「まつげやるなら、眉も整えてあげようぜ、すこ~しだけよう」

テト姉も楽しそう、やっぱり女子だ。まず化粧水を顔に塗ることを促される。これくらいは普段からやっていた

「はい、次は乳液も塗っておこうね。リンちゃん、お目々瞑って~」

めぐ姉、乳白色の液体を両手に付け、わたしの顔に塗ってくれる

「さ~、ルカちゃん、バトンタッチ~。後はお願~い」
「は~ぃルカちゃ~ん、お化粧どぅぐ~」

はじめに、少しだけ、眉が整えられる。IA姉が持ってきてくれたお化粧セット、ルカ姉が曲を口ずさみ手にする

「さぁ、リンちゃん、座ってお顔を上げてください」

破顔しながら、わたしを見るルカ姉。わたし、ぺたんこ座りにすわる

「ルカ姉、すっごく楽しそう~」
「ふふっ、楽しいですわぁ。リンちゃんにお化粧してあげられる日が来たんですもの。すこ~し、目を瞑ってください。まずはアイラインからからですわ」
「ん~」

ブラシを使い、アイラインをひいてくれる。スタッフの『メイク』さんが施してくれる感触とは違う。プロかそうでないか、という違いでは無い。今、大人の『おめかし』をしている気分

「はい、一度目を開けてください」

目を開ける。細かいところを修正してくれる

「ど~お、リンちゃん」

手鏡で、わたしを映してくれるめぐ姉。薄くひかれたアイライン、何となくお目々ぱっちり。な気がする

「ルカ姉すごい。わ~、変わった気がする~、めぐ姉。でも、何でかなぁ、撮影とか舞台でもお化粧するのにさ。なんだかそれより、ずぅっと変わった気がする」

素直な感想。バッチリに『過剰』が付くほど施されるのに、ステージメイク。その化粧よりも『良い感じ』に思える

「あのね~、舞台とか、撮影ってさ、その状況に『映える』化粧をされるんだぁ。ファンデーションも、やたら色合い極端だよね」
「おにぃ達も、V系(ヴィジュアル系)みたいに白かったりするだろ。逆に日焼けメイクで黒く塗るとかさ~」

Mikiちゃん、リリ姉が、メイクの違いを説明してくれる

「今日のお化粧はね、リンちゃんの魅力を引き出すためのメイクなんだよ。だから、舞台のメイクとは全然ちがうの」
「かわいいりんりんを、さらにかわいくするめいく。ルカさまなら、間違いなしなし、ななふっし~」

過剰なまでに、褒めてくれる『姉』達。わたしって、どれだけ幸せ者なんだろう

「カルさん、ありがとうございます。責任重大ですわね。リンちゃんの魅力を引き出して差し上げませんと。うふっ、神威さん、覚悟してくださいな」
「ケケケケケ、年貢の納め時だぜ、かむ~い。そろそろ『ソレ』だと自覚させてやろうじゃね~か」

紫様の名を出す二人。何故彼なのか、あの日は思い至らない。ただ、艶めかしい表情のルカ姉と、魔のオーラ笑みのテト姉。その『差』は多少、気になった

「さ、今度は、そうですね『伏し目』に。少しだけお顔を下げてくださいな」
「うん、こんな感じかなぁ」
「上手だよ~、リンちゃん」