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代打の代打
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はじまりのあの日17 中華の街へ

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又お人形屋さんのCMが流れてる。ああ、でも、メーカーが違う。それに、今度は五月人形だ。五月人形か。ああ、また思い出してきちゃった。私が14歳、五月人形を飾り終えた後の神威の家で。ゴールデンウイークまで一週間というあの日。飾り付けを終えて、みんなでお茶をしていた時だったな。もう、今日はしょうがないでしょう。はい、また伺いました、記憶の書庫さん。入らせていただきますよ。ちょっとごめんあそばせ―

「はい、はい。ん、わかりました、話し合っときます。ええ、全員揃ってますから」

メモを取り終わり、スマホを切るカイ兄。話しぶりでは、どうやらプロデューサーからのようだ

「ど~したの、カイト。プロさん達からでしょ~」
「うん、めーちゃん。殿組のプロさん『お前等仲良すぎ』だってさ。ちょ~どいいから、聞いて~みんな。お仕事依頼だよ~。古都以来の、フルメンバーで~」

彼お手製の柏餅、兄謹製のきな粉ちまきをつまむメンバー。仕事と聞いて、テンションが上がる。個々の仕事も増えて『メンバー勢揃いでお仕事』というのは、中々に難しくなっていたから、尚更嬉しい。そのフルメンバー、今日は、みんな午後のオフが重なった。五月人形飾っちゃおうと、神威の家に集合した

「仲良すぎ上等~。仲良くなきゃ勤まらないじゃない、俺達は。全員集合の仕事って半年ぶりじゃない、カイト。で、主からの内容は」

わたしの横に座る彼、お茶を啜りながら聞く。京の都から約半年、結局彼の膝には座れずにいる。と言って、彼の側から離れようとはしないのだけど

「あのね、柏餅やちまきのアピール。歌よりはそっちのが強いみたい。有名な歌い手さんに、商店街を盛り上げてほしいってさ。少し、売り上げが落ちてるみたいでね、無理を覚悟で依頼してきたらしいよ。予算が少ないから、講演料がって」
「あら、カイト兄様。それは、ワタシ達にうってつけのお仕事ですわ」

立ち上がって説明する兄に、嬉しそうに応えるルカ姉

「そうですよ~。誰かを癒やせたら、重荷を外せたらっていうPROJECTなんですから。無料でも良いくらいです~」
「拙者らの歌で、商店街ガ活気付けば、何よりでゴザルナ」

両手を、胸の前で組むピコ君。アホ毛が今日も♪マーク。勢いよく、力こぶを見せるアル兄

「だめだよピコきゅん、うちら一応プロの歌い手なんだから~。報酬は頂かないと」

ウィンクMikiちゃん

「お、Mikiって、そんなにガメツかったんか~」

イタズラっ子モードでリリ姉が返すと、Mikiちゃんは微笑んで

「ううん、リリね~さん、講演料は要らなくてもさ『ナニカ』で報酬。例えば一年間、月一で、豚まん送ってもらうとか」
「それ、いいかもね~。食費が浮くよ。まあ、冗談はさておいてっと」

可笑しそうに笑うカイ兄、仕事内容を告げようとする

「アピールは良いけどさぁ。歌わないの、カイ兄」
「「「「おうた、うたいた~い」」」」

今度はやや、不満げなレンが聞く。歌い手としての自尊心なのだろう。天使様は朗らかだ

「もちろん、歌うよ~。オレら歌い手なんだから。歌うなって言うなら、声かからないよ。その中でね、今から言うメンバーは特に重要なんだ」

メモ用紙を片手に、立ったままカイ兄。重要事項を伝えるのと、裏腹な微笑み

「これから呼ぶ人は、お稚児さんの衣装で行列して貰うからね~」
「呼ばれた方は、その場に立ってお返事しましょう」

カイ兄の言葉に、キヨテル先生が提案。お稚児さんと言うくらいだ。天使様で間違いないのだろう

「まず、リュウトく~ん」
「はいっ」

右手を元気に挙げて立ち上がる。予想通りの名前が呼ばれる

「次にユキちゃ~ん」
「は~い」

同じくユキちゃん。リュウト君の横、ゆっくり立ち上がる

「いろはちゃ~ん」
「は~い、やった~」

両手を挙げて、跳ね上がる

「オリバーく~ん」
「ハァイ」

いろはちゃんの隣、左手を挙げ、立ち上がる

「え~、それからね~」

まだいるのか、と疑問に思った。もう、自分たちは子供じゃ無い。わたしも、きっと片割れも、勝手に思っていた時分だったから。少なくともわたしは、もう『子供いないじゃないか』と思ってた

「え~、リンとレン~」
「えぇっ」「はぁっ」

身を乗り出す。片割れと、声が重なる。不満な声が

「最後に、IAちゃ~ん」
「は~い。やった~嬉し~な~」

IA姉、パーカーの余る袖、回しながら手を上げる。微笑みながら立ち上がる。小柄でかわいらしいIA姉。似合うだろうと選ばれた。後にプロデューサーから聞かされた。これだけ対応に差があるのも『大人と子供』の顕著な差だ。今だったら分かる

「ちょっと待ってよ、カイ兄。わたし達もお稚児さんするの~」
「おれら、もうそんなガキじゃね~し」
「いや、オレに言われてもさ。依頼主さんからの要望だし。それに、今のって、IAちゃんにも、天使様にも失礼だよね」
「「あ」」

わたし達を窘める(たしなめる)カイ兄。言われてみれば、全てが失礼な物言いだった。IA姉にも、天使様にも、依頼主さんにも

「ご、ごめんIA姉」
「おれ、そんなつもりで言ったんじゃ」
「ぅふふ~。な~んとも思ってないよ~ぅ」
「「みんなもごめん」」

わたしもレンも、慌てて頭を下げる。IA姉は、ほわほわしたその穏やかさで意に介さない。天使様は、何の事だかわからない

「ま、多感な時期だ。しょうがないじゃない」
「あ、それからね、殿にもお願いしたいって」

多少の理解を示してくれる紫様、も選ばれる。メンバー全員、意外そうな顔で彼を見る。彼自身、呆けた顔。彼の稚児衣装。想像するだけでかわいらしい、が

「ん、俺も稚児すんの。いいけど、さすがに変じゃない」
「ああ、殿にはね、あのカッコで先導して欲しいって。ユニフォームの侍姿。端午の節句だからさ。簡単にでも、出陣行列みたいなこと、したいんだって」

稚児を先導する、侍。なるほど納得がいく。同時に、彼と仕事が出来ると思い、単純なわたしは楽しくなる

「はっははぁ、分かった。粋なこと考えるじゃない、依頼主様。それ、やろう。商店街のために。で、場所は何処、カイト」
「うん、中華街とか港が有名なあの町『ゼロヨン』ってレースもしてるらしいよ」

彼との出陣行列を想像して、気持ちが高揚していくわたし。完全に子供だ。さっきの文句を言う資格などない。ただし、言葉には出さない。また、変な視線を受けても堪らないから

「じゃ~、そこまでは、又みんなで新幹線かな~」
「ううん、ミク。商店街の最寄り駅までは行けないんだ、新幹線だと。首都圏、オレ達が歩くと、今は迷惑かけちゃうからね」

そう。ありがたいことに、わたしたち。一団で出歩くと、それなりの注目を受ける。京の都は、周りの観光資源に目が行っていたおかげや、分散行動で助かったけれど。やはり移動は混雑を避けるため、チャーターしてもらったバスや、ジャンボタクシーだった。混雑させてしまっては、申し訳無い

「プロデューサーの話しでは、駐車場が近くにあるらしいから」
「なるほど。俺達で、車移動ってわけだなカイト。土産積めるし、むしろ良いじゃない。なら、今のうちに車割りしちゃおう」