CoC:バートンライト奇譚 『盆踊り』前編
「ん? ああこれか」やっと認識したと言わんばかりだ。「俺は陶芸に必要な土を掘り出そうと山で仕事をしていたところだったのだが、手近にヘルメットが見当たらなくてな。あたりを見渡したところ……」
「……その壷が?」
「そういうことだ。こいつは特殊でな。ちょうど目の当たりには穴も開いてるんだ。いやはや思いのほかフィットしすぎて、意識していなかったぜ」
どういうことだ。どういうことやねん。邪教徒。
バリツ、タン、アシュラフの表情に露骨にコメントが表れるが、斉藤は気に留める様子もない。
「まあ、よろしく頼む」
続けてタンが語りだす。
「じゃあ、次は俺かなあ」
「たかしの次ときたら、たかおかしら?」
辛辣に突っ込むアシュラフ。
「なんでやねん! 俺はタン・タカタン」
「人間に化けたパンダ、つまり邪教徒ね」
「どんな脈絡やねん! えーと、俺はあれやなあ、この変態の助手みたいなもんで、重機専門スタッフや」
「きさま……」額に血管、笑顔のバリツ。
「まあバックアップなら任せてや」
「何かあったら、あなたに足払いして逃げていいのかしら、邪教徒?」
「なんでや!」
軽く咳払いをして、バリツは斉藤に向き直る。
「改めて名乗ろう。私はバリツ・バートンライト。冒険家教授だ」
「よろしく頼むぞ、バリツ」
斉藤が握手を求め、バリツはそれに答えた。
……握力が強い!
「さて」
「残るは……」
「不思議な子供だな」
三人の男は、黒衣の少女に目をやる。
「私はアシュラフ」簡潔でそっけない自己紹介であった。
「今はそれで十分でしょう、邪教徒の皆さん」
そして、フンっ、と三人に背を向けると、現地の人々と思しき元へ、てくてくと走り出していってしまう(その一挙手一投足から、布地に隠された金属音が響いていたのを三人は容易に聞き届けた)。
「彼女に続こう、他に選択肢はあるまい」
バリツ、タン、斉藤は、後に続いた。
作品名:CoC:バートンライト奇譚 『盆踊り』前編 作家名:炬善(ごぜん)