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代打の代打
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はじまりのあの日21 ミクの誕生日

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バイキング形式で、イスはまた、別のスペースに

「飲み物ついで~」

カイ兄の声。輝くシャンパンに、透き通る白ワイン。紫の彼は当然、日本酒。銘々のグラスに、様々な飲み物が注がれる。ごちそうを目の前に、渇く喉、好きな飲み物。ここまで来て、待てる人間などいやしない

「じゃ~あ、本日の発声は主役のミク~」
「わ~い」

めー姉、ミク姉を輪の中心へ

「カイ兄、がくさん、美味しそうなのありがと~。みんなもプレゼントありがとうぅ~。と~っても嬉しいよ」
「大事なミクの誕生会だもん、張り切っちゃった。ネタな歌でもあるけどさ、半分くらいは、オレの本音。大好きだよ、ミク」

カイ兄、汗ばんだシャツの襟元をはだけさせる。紫様も同様、ちょっとセクシー

「お礼の意味合いも強いじゃない。ミクの歌で初めてプロジェクト知ったわけだから、俺。ありがとう、ミク」
「「「「「「「「「「「「ありがと~」」」」」」」」」」」」

紫様につられ、全員から上がる声

「ミク姉、これからも歌おうね、大好きだよ~」
「ミクさん、姉として誇らしいですわぁ」

わたし、ミク姉へのおめでとう。ルカ姉、自慢の妹に微笑む

「ミク、サンキュ~、っす。自分だって自慢す。ミクと、みんなと、自分歌ってんだぞって」
「アタシも鼻が高いわ~。始まりの歌姫で良かった。ミク、あなたの姉で幸せよ」
「「「「みくちゃんありがと~」」」」

勇馬兄、誇らしげ。めー姉、自慢げ。天使様も口々にお礼。ミク姉、こういうの弱いんだよね

「ふぁ~、ありがとう~。で、でもね、でもねっ、みんなでボカロなんだからねっ。わたし一人じゃ、歌えないんだからっ。~~~っみんな大好きだよっ、ボカロファミリー。みんなわたしの家族なんだから~」

大泣き、カイ兄、もらい泣き。大勢もらい泣きする中

「収拾つかなくなるじゃない。おまえ達、杯をかかげろっ。祝宴だ、いつまでも泣いてんじゃないミク」

杯を掲げる紫様。こういう時、みんなを鼓舞するのは、初めて親族以外、別の事務所から来た、紫様

「そうよ、ミ~ク、泣かないでっ。さぁ、いつもの可愛い笑顔をお姉ちゃんに魅せなさ~い」

取り仕切るのは、始まりの歌姫、大層素敵な女王様。ミク姉の肩を抱く。頭を撫でてあげて、ミク姉の顔を上げさせる

「み~んなありがとう~ううう。これからもずぅぅぅぅっと家族だよっ。乾杯するよっ」

泣き笑い、みんなに告げる

「「「「「「「「「「乾杯いいい。ミク、おめでとう~っ」」」」」」」」」」
「ありがとうううううう」

ミク姉に、まずはグラスを捧げる。大きなテーブルに着いているメンバー。全員とは、コップが合わせられない。初めは、近くの人と合わせる。わたしは、フルーツ・オレの入った自分のコップを、彼のぐい飲みと合わせる

「お疲れ~がっくん。お料理ありがとね~」
「お疲れ、リン。お手伝いありがとう。さ、好きなの食べて欲しいじゃない」
「神威のに~さん、リンちゃん、お疲れ様ぁ~」

寄ってきてくれる、IA姉とも乾杯。さっそく、料理に手を伸ばす面々。ミク姉はめー姉、カイ兄に甘えんぼさんモード

「豚~うまうまです~。こんなに分厚いのにや~らか~い」

珍しくさけぶピコくん

「肉ジャガっ、ゴッツ(神)じゃがいもほろほろっすっ」
「勇馬、それ半分はリンが作った料理だ。お礼言っとこうじゃない」

勇馬兄の反応はいつも通り。全身で美味しいを表す、彼に言われ、わたしに『サンキュ~』告げてくる

「オムチャーハン、すっごくおいしいです、カイトさん、ぽ父さん」
「あは、ユキ口の周り付けすぎ~」

口の周りがルーだらけのユキちゃん声高に。笑うリリ姉。キヨテル先生が、おしぼりで拭ってあげる。三人で微笑む

「このポテサラで無限に飲めるわ~。白ワインににぴったりね~」
「め~ちゃんペース早すぎだってば。あ、金目の煮付け、おいしいよ、殿」

いつものやりとりのめー姉、カイ兄

「クレープうっまいっ。バナナと生クリーム絶品」

弟が食べるセルフクレープ。あの食べ方、ごはんなのか、デザートなのか。立ち位置がやや微妙

「肉厚の大船渡産がとろけますぅ。やっぱりわさびも本物に限りますわぁ」

とろける笑顔のルカ姉に

「えびたるたる、正義じゃないですか~。ぷりぷり~」
「ろぶたるたる、おみそもうまうまうま」

と頬を紅潮させるIA姉。カル姉は新たな組み合わせにご満悦

「おいしいごはん、ありがとうにいさま」

気遣う5歳、リュウト君を

「殿下、スキナモノを取ります故、申しつけてクダサレ」

と、ポン酒片手にさらに気遣う25歳、アル兄

「あふっ」
「お、リン、気をつけてな。揚げたては熱々じゃない」

熱々のコロッケを口にするわたし。飲み物をわたしてくれる、紫様に撫でられる

「ありがと~。がっくん、コロッケすっごくおいしいよ」

二口目は、タルタルソースをたっぷりつけて。冷たいタルタルソースが、コロッケを適温にしてくれる

「鯵フライ、イイ揚げ加減じゃないか、カイト。良かった、そうやって、リン達が喜んでくれんのが何よりじゃな~い」

醤油をフライに掛けて食べるのは、どこまでもやさしい紫の彼

「そんなぽ兄ちゃんが大~好き。甘~いにんじんも大~好き~」
「~っ」

言おうとして、一度大口を開けて、すぐに言葉を飲み込んだ。めぐ姉と『同じ事』を言おうとして。その言葉を飲み下した。何、この違和感は、と思って。好きなものは沢山ある。果物、歌、メンバー。今さっき食べたコロッケだって、紫様の作るごはんだって、全部『好き』だ。でも、何なのだ、この違和感。彼のことは、彼への『好き』に何故か違和感がある。違う、違う、何かが違う。胸の奥がぎゅっとなる。照れとも気恥ずかしさとも言いがたい。身体が熱くなる。好きなのに、何かが違う『好き』が違う。なぜ違う、何が違う

「ん、どうしたのリンちゃ~ん。好きなもの取ってあげるよ~ぅ」
「あ、う、ん。IA姉ありがとう」

IA姉の気遣いの声、思案から逸れる。ブラコン、シスコンを公言しているめぐ姉。そのブラコンパワーがわたしに抱かせた『違和感』それが気になって、この日の一次会、わたしの意識は、上滑りしながら進んでいく。きっと古都の辺りから、少しずつ変ったのだろう。心の奥底、中華の町の夜、想っていたのだろう。めー姉、カイ兄の結婚で、確実に『意識』したのだろう。めぐ姉やリリ姉の言葉も、心の変化を手伝ったのだろう。彼への『好き』が違うこと。メンバーとして、兄として『親友』としての好きではない。あの日、わたしは解ったのだろう。ブラコンか。そう言いつつ、わたしと彼を応援してくれるよね、めぐ姉。今のわたしが、ふと思う。きっとめぐ姉は、大好きな彼の幸せを、一番に願っているのだろう。嫉妬されず、わたしも一緒に愛してくれる、大好きなめぐ姉。ほんとうにありがとう。よし、にんじんとツナ缶の買い置きがあったから『にんじんしりしり~』もメニューに加えよう。めぐ姉の好物の一つ、にんじん料理。その発想で、意識が今へ戻る。ふふ『感謝とお礼のにんじんしりしり~』腕によりをかけなくちゃね―