スピカ
指と指の間から星屑がこぼれおちてゆく。まるで、すべてを掴むことはできないのだ、と思い知らされているような不思議な気持ちになる。
ふと焦点が定まる。
青白く光る、ひときわ美しい星。
「スピカ……」
一等星は、孤独だ。
特別な名前を持ち、星座として構成された星々と区別される。その輝きから星座を見つけるときの基準にされ、輝きを落とすことを許されない。夜空には無数に輝く者たちがいるというのに、彼らに負けることは許されない。
「だから、君は」
だから一等星は、
こんなにも美しいのか。
寂しかったろう、と抱きしめてやることも許されないだろう。
私が君を覆ってしまったら、世界が標を失ってしまうから。
そしたら君は、泣くだろうから。
違う空にいる私は、君を見つめることしかできない。
【終】