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第2章・3話『永久を生きし者、永遠に縛られし者 壱』

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東方星写怪異録 第2章・3話

―篝宮市―???―
しとねは椅子に座ってぼんやりとしていた。
動こうとするも身体が重く、身動きが取れない。
意識もハッキリとせず、周囲の確認すらも出来なかった。
しとね「確か私は……虚喰に潰された筈じゃ?」
思い出そうとするも……しとねが潰される直前の、澪薗達の驚いた顔しかどうにも思い出せずしとねは溜息をつく。
しとね自身も、何故あの時ぼんやりとしていたのかが分かっていなかった。
ただ、誰かが呼んでいる様な声が聞こえていたのだ……誰の声だったのかは分からずじまいなのだが。
色々考えていたしとねだったが、強烈な眠気に襲われ椅子に座ったまま眠りにつく。

???「貴女があの残酷な世界を見ずに新しい世界を迎えられるのであれば……私はどんな醜悪な存在にもなりましょう」
眠りについたしとねにそう囁きかけながら、1人の男性が近づく。
???「それが、貴女の望みでなくても……貴女の呪いを解けるのならば」
そう言いながら、男性はしとねが座る椅子の横を通り過ぎ暗闇にその姿を消して行った。


―篝宮市―商業区―
工場を離れた後、澪薗はしとねの捜索の為警ら事務所に戻っていった。
“一先ず、お前らは家に帰れ“
背中越しだったがそう言う澪薗の言葉と気迫に圧され、3人は住宅区の自分達の家へと向かっているのだった。
雪「しとね……無事だよね」
遵「死にはしないだろう」
玲「とは言っても安否確認すら出来ないんじゃあ、望みは薄いわね」
3人はそう言い、溜め息をつく……商業区と繁華街区の境界に設けられた防壁と大きな通用口に差し掛かった時、その場にそぐわない人物を3人は見つける。
守央「ん?おやおや澪薗から迎えに来いと言われて来てみれば……君達の送迎、という訳かな?」
夕城守央、しとねの保護者であり観光関連を取仕切る夕城組の組長を親に持つフリーライターなどを営む情報屋。
そんな彼の登場と、先刻のしとねの状況も相まって……3人は言葉を発する事すら出来なかった。
守央「さて3人共、今からしとねを迎えに行くから車に乗るといい」
3人「……え?」
呆気にとられる3人に笑いを返しながら守央は。
守央「僕は情報屋だよ?これくらいの捜し物はお手の物さ」
雪「……しとねは、何処に居るの?」
雪にそう聞かれた守央は足下を指差し────
守央「この島にある地下施設、だよ」

―篝宮市―地下施設―
しとね「えー、何処?」
ジン「知らぬ」
早々に会話が続かなくなったしとねは思わず大きなため息をついてから周りを見渡す。
そこはドーム状になった空間で、しとねが座っていた椅子以外には何も置かれていなかった。
しとね「……とりあえず、外に出てみようか」
ジン「────」
ジンの声が聞こえづらくなるのにつれて、しとねは急激な吐き気に見舞われ瞬間。
ガッ
しとね「(な……に?)」
立っているのがやっとだったしとねは、後頭部に重い衝撃を受けて地面に崩れ落ちた。

────『HQ、こちらβ隊リーダー……第1目標の保護、確保に成功した。』────
────『目標の更新、了解……速やかに離脱する。オーバー』────

―篝宮市―天望資料館―
守央「……ああ、ありがと、何か分かったらまたよろしくね」
資料館に着いた時、守央の携帯が鳴る。
3人の下へ戻ってきた守央は────
守央「入れ違いになった様だね、しとねはここから移動させられているらしい」
遵「移動させられているって事は……しとねは誰かに運ばれているんですか?」
雪「でも、何でしとねが?」
玲「それは守央が説明してくれるんでしょ?」
守央は少し考える様に顎に手を当てると、口を開いた。
守央「それじゃあ、僕があの子と初めて出会った時から話していこうかな……」

────守央は元社雛の村に1度訪れた事があるという事。────
────そこで当時、現神凪のしとねの母と巫女だったしとねと会った事がある事。────
────それから半年、社雛の村にある噂があった事。────
────噂の内容が、龍を鎮める為に神凪を贄として洞窟に在る神棚の奥へ奉納するという事。────
────守央がもう一度来た時には村自体が無くなっていた事。────
────そこは抉った様な巨大なクレーターが出来ていた事。────
────付近に在った洞窟の中に在る、神棚の前にしとねが倒れていた事。────
────しとね自身は何も知らいないとの事。────
────今は村があった場所は湖になっていて観光地になっている事。────

守央「そして、あの子には『何か』がある……それを知れば誰もが欲する程の『何か』がね」
守央はそう言いながら資料館の入口へ近づいていく、3人もその後ろをついて行くが────
???「そう、彼女には世界を変えることが出来る程の『力』があるのですよ」
扉を開こうとしていた守央達の背後から声が聞こえ、振り返った先に居たのは……青年だった。
物腰柔らかく、雰囲気も明るい見た目の金髪の青年……ただ1つ、腰の細剣だけが違和感を放っていた。
???「今宵の月は……きっと素晴らしい月になるだろうね」
微笑む青年がそう話しながら細剣を抜き、守央達へ向けると、青年の影が蠢くように揺れ……次々に虚喰が這い出てくる。
驚くのも束の間に、虚喰は大口を開け突っ込んでくる。
思わず遵、雪、玲の3人は目を瞑る……

────第2章・3話『永久を生きし者、永遠に縛られし者、生まれ変わりし者 壱』────