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ひさぎマッチョ化計画

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 おれは檜佐木修兵。顔の傷とノースリーブがセクシーポイントのそれなりにイケメンな死神である。破面との戦闘で渋々斬魄刀を解放したところ人気投票の順位が思いもよらず上位だったため、ちょっと風死もいいんじゃねえかとも思い始めている。だって六位だぞ。朽木隊長の次だぞ。これって凄くないか。
 しかしアニメで実体化したアイツはやっぱり気に入らなかった。何せおれより出番が多い。どういう事だ。

 アニメと言えば、最近おれには悩みがある。おれは昔から何だかんだと悩みの尽きない苦労人ではあるが、今回のこれは悩みというより気になっている事である。それはおれのノースリーブにも関係する。そう、筋肉だ。正確には筋肉のつき具合である。

 原作を見てもらえば分かるが、おれは割と細身だ。身長がほとんど同じ斑目がおれより9キロも体重があったのには軽くへこんだりもしたが、多分おれは今流行りの細マッチョというやつなのだ。そうに違いない。しかし、だ。アニメだと妙に腕が太く感じるのは気のせいだろうか。逞しく見える。それにアニメだと落ち着いた頼れる兄貴的なオーラをびしびし放っていて格好いい。そんなアニメを見てからまた原作のおれを見てみると、非常に頼りなく感じてしまうのだ。やはり筋肉は必要だ!

 おれはどうやったら筋肉キャラになれるのか思案したが何も考えつかず、取り敢えず誰かに聞いてみようと思い至った。斑目の体格くらいが理想だが、あまり親しくもないし彼に聞くのもちょっと癪だ。阿散井なんかもいいとは思うのだが、後輩にそんな相談をするのもささやかなプライドが邪魔をする。隊長格に聞くのが一番良い気がするが、まず自分の隊長がいないし(東仙隊長はおれより細いし)、狛村隊長に聞くのは何か根本的に間違っているし、更木隊長に聞いたりなんかしたら「戦いまくれば自然に筋肉付くじゃねえか。ほら刀抜けよ!」とか言われておれの死亡が確定するだろう。本当は六車さんがベストなのだが……百年前の礼や積もり積もった思いすらまだ伝えられていないので却下だ。もろもろいっぺんに伝えてしまうと「あなたの筋肉に憧れて死神になりました」と捉えられてしまうだろう。それだけは避けたい。

 はあ、と溜め息が漏れたところでふと、とあるキャラの存在を思い出した。例のアニメでマッチョキャラとして一躍脚光を浴びた奴の事を。今まですっかり失念していた。あいつなら!
 おれは勢いのままに九番隊の隊舎を飛び出した。そしてある人物の元へと向かったのである。

 十一番隊の執務室には斑目と綾瀬川の二人しかいなかった。おれはふと先日の同人誌即売会での光景を思い出してしまったが、二人は服が乱れている事もなく真面目に席に座って書類作業をしていた。ほっと胸を撫で下ろしていると、どうした、と斑目が席を立った。綾瀬川はチラリとこちらを見ただけでシカトである。仕方ない。おれは出迎えに来た斑目に向き直って告げた。
 「綾瀬川に話があって」
 「そうか。おい弓ち……ガッ」
 そう斑目が後ろを振り返った隙に、おれは彼の首に綺麗に手刀を振り下ろしていた。ぱったりと床に倒れる斑目。おれだって伊達に副隊長はやっていない。敵に背を向けるとは十一番隊として失格だな斑目よ。一時的に意識を失って動かない彼を見下ろし、お前には負けねえぞなどと胸中で呟きながらその死覇装の下に隠された肉体に想いを馳せていると、じりじりとした視線が自分に突き刺さっている事に気付いた。顔を上げると、綾瀬川が完全に変人を見る目でおれを睨んでいる。そんな奴を見て、そういや綾瀬川ってマッチョ好きなんじゃないのかと思い付いた。パートナー(斑目)といい、更木隊長といい、さらには自分の斬魄刀まで──

 「綾瀬川!!」
 「な、何」
 「瑠璃色孔雀師匠を貸してください」
 「……はあ?」


 果たして檜佐木は無事に美しい筋肉をゲットできるのか!? 乞うご期待! (注:続きの予定はありません)

作品名:ひさぎマッチョ化計画 作家名:泉流