小話 ソラヘ 【近未来】
長いケーブルの先にはマスターのキャンピングカー。
その天井には巨大なパラボラアンテナが宙を挿している。
「KAITO、準備はいいかい。」
マスターの合図に合わせて俺は宙(ソラ)へ向かって歌を歌う。
音声になる前にその歌は電波へと変換され宙(ソラ)へと拡がって行く。
誰にも聞こえない歌。凍った歌。
夜空というこの広大な暗闇の先で、いつか誰かに受信され解凍される瞬間を夢見て旅をする歌。
この銀河系の、この太陽系の第三惑星地球。
俺達はここにいます。ここにいます。ここにいます。
まだ見も知らぬ友人達よ。
この歌声を聞いたらどうか返事をください。
「俺達が生きている間に返事がきたらいいよなあ。」
そう言って笑うマスターの夢が叶うようにとの願いをのせて、俺の歌は旅を続ける。
作品名:小話 ソラヘ 【近未来】 作家名:てるてる