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『掌に絆つないで』第一章

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プロローグ


魔界統一トーナメントが初めて開催されてから、もう百年近く経つ。
魔界へやってくると、必ず北神たちが出迎えてくれた。
すでに国は解散となりオレは王ではないというのに、かつて雷禅がいた場所をオレの部屋として空けてくれているのだ。野宿だって構わないが、純粋に彼らの気持ちが嬉しかった。
人間界で点々と変わる居住地に比べれば、あまりに居心地のいい場所。
ずっといればいいのに、オレは魔界トーナメントが終わると、また人間界へと帰っていく。蔵馬とともに。

人間界では、蔵馬との共同生活。時の流れが違う人間たちの間で、隠れるようにしてオレたちは暮らしていた。いつの間にか、魔界でもオレと蔵馬はほとんど離れることがなかった。
妖狐の姿に戻ることなく人間の姿を保ち続ける蔵馬は、オレの人間だった時期を証明してくれる存在になっていたのかもしれない。螢子や、桑原や、おふくろがいた頃を忘れてしまわないように、オレは蔵馬を巻き込んで人間界にしがみついていた―――。