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『掌に絆つないで』第二章

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Act.04 [飛影] 2019.6.18更新


再びこの地に訪れる日が来ようとは、予想していなかった。
豪雪の中、相も変らぬいじけた種族が自分と幽助を物陰からただ見守る。
ここは自分を捨てた日から、何も変わってはいないのだ。
「この先です」
先導していた雪菜が、氷で出来た家屋を指差した。
躯に促されてやって来たものの、御伽話のようなつじつまの合わない雪菜の話を、飛影が信用できるはずもなかった。
顔も知らない母との対面が、本当に実現するものかどうか、目前まで来ても疑心は晴れない。しかし、雪菜の押し開いた扉の向こうに、確かに彼女はいたのだ。

開け放った扉から、広くもない室内に外気が押し寄せる。
壁際に、二人の氷女の姿が見えた。自分を城から投げ捨てた女と、雪菜と瓜二つの女。見た目では年の頃も雪菜と変わらない。説明の通りなら、その女が母だと名乗り、飛影を呼びつけた張本人。
パタン、と扉が閉まると、吹きすさぶ風の音は少し遠ざかった。
雪菜に似た女は、ゆっくりと立ち上がる。そして、まっすぐ飛影を見つめた。
「おかえりなさい、飛影」
やはり雪菜と同じ声で、女は飛影に呼びかけ、一歩前へと進み出た。
さらにもう一歩踏み出し、次の一歩をも踏み出しかけたとき、飛影は腰の剣を抜き去り、剣先を女に向けた。
「……飛影!」
「…お兄さん!」
幽助と雪菜がそれぞれ声を発した。
室内の空気が瞬時に凍りつく。
剣を向けられた女は、挑むような視線を対峙する飛影に送った。それから、ふと穏やかに笑むと、「この距離で充分よ」と囁き、周囲に退室を願い出た。三人は、戸惑いながらもそれに従う。
そして、飛影と女だけが室内に残った。
飛影は未だ剣を収めず、女を睨みつける。彼女もまた視線を逸らさない。
二人は向き合ったまま、長い沈黙が訪れた。