俺のルーイ
嵐が続いて、領地の森を薙いでまわっていた。戸棚の菓子をやっても、消灯でおどしても、フェリシアーノは帰らなかった。
「まだお話したいもの」
ルートヴィヒはうぶだから、つい負けてしまう。
「ミネストローネ素敵だったろ。俺得意なんだ、兄ちゃんが、トマトやズッキーニなんかいろいろ送ってくれて、よく作ったんだよ」
あくびを堪えてやった。
「兄ちゃん、土曜日に手紙を書いて、教会に行きがてら出すんだ。俺はね、兄ちゃんを急かしたらいけないと思って、知らないふりで待っている・・・。手紙がやんでもう1ヶ月たったよ」
ギルベルトはこの休暇もアントーニョの別荘で過ごすらしかった。あの地方の心地がよいことは、電話交換手が知らせてきた。
『すばらしく暖かいんだ。お前が休暇を取れる日を、毎度祈っているんだぜ』
『近くに就いたら寄るよう、気をつけるよ』
『じき雨が流れていくそうだから、靴下を忘れるなよ』
『ホットココアも忘れないよ、いいからおやすみったら』
『くれぐれもな、俺のルーイ』
ヴァルガス宛ベルリン気付。
「星が出て、気圧計が許せば、飛ばしてやるんだ」
ルートヴィヒはローマから南まわりで、アフリカ北局に着陸してから動けなかった。ベルリンのフェリシアーノには、その動向がまるで知れず、小首をかしげた。
「隊長は飛行隊を指揮なさるので」
ルートヴィヒは寝台に帰って、フェリシアーノはソファを寝床に、毛布にくるまってじっといた。似た兄弟。籐椅子にかけて、青いインクの『愛しい弟』から始める、白い横顔が見えるような気がした。
「愛しい弟、夏が終わったばかりでひどい雨に濡れる、ベルリンは辛いだろう」
フェリシアーノが解したのは、
「と、今夜も手紙を書くのだろう」
ルートヴィヒがランプシェードをひねった後だった。