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聖誕祭

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聖誕祭には雪がないのが普通で、アントーニョは乾いた風でのどをやらないように、教会までドロップをなめさせた。教えるとかえって噛もうとするのでこの子どもは、困る、とフランシスに愚痴をきかせたら、フランシスが発った日から、おとなしく溶かすようになっていた。
肥やした鳥を絞めて、蜜を塗る。アントーニョはぼんやりしていた。はけから落ちた蜜が、小麦粉にしみていった。ロヴィーノはきっと花を折りにいって何月か帰らないでいるが、今年もトゥロンを焼いてやらないといけなかった。


新興国は明るかった。ロヴィーノは電気の飾りつけに慣れない。フェリシアーノは、兄がいた地方の祭りを兄の古い手紙と、人づてにしか聞かなかったので、つるし飾りまでは知らなかった。
「兄ちゃんの好きなヴィーノをとったからね、トルタも、ゼリーも、兄ちゃんの好きなのを選んださ」
ビステッカには派手な皿を使っていて、菓子はおおぶりなガラス椀の、すみれを咲かせたふたの向こうに積んである。フェリシアーノに贈り物が届いたことは、ロヴィーノもなんとなしに感じていた。優しい弟だった。


寝床で、会わない兄を思った。夜更けにさよならを言った。アントーニョは朝まで知らないで、手紙を読んで、やっと知って泣いた。ロヴィーノは姉もなくして、アントーニョはまた泣いた。農園の世話をロヴィーノがすることになるから、その年は肥料に失敗して、アニスを駄目にした。
『ロヴィちゃんはずっと大事よ』
『いつか分かる日が来る』
「俺だって泣かせたいんじゃ、ないのに」
遠くに教会の鐘が鳴った。ロヴィーノはいったんランプを点けて、消した。弟は寝ていたから、小さくろうそくをともした。


聖誕祭には雪がないのが普通で、アントーニョは乾いた風でのどをやらないように、教会までドロップをなめさせた。ロヴィーノがひとつつまむと、フェリシアーノと食べるよう言って、残りを鞄に詰めてやった。
アントーニョの背中は温かく、うなじから懐かしいにおいがした。腹にまわした手を、厚い掌が覆った。飛行機に手袋を忘れた話をした。
「ついててやれんのんから、気ぃつけんとあかんよ」
胸に抱いてやって、雪が降るように、額から点々と口づけた。カシミアがくすぐったが、ロヴィーノは平気にした。
「愛しているというのか」



作品名:聖誕祭 作家名:井伊