二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

『掌に絆つないで』第三章

INDEX|13ページ/16ページ|

次のページ前のページ
 

Act.12 [幽助] 2019年10月1日更新


飛影と蔵馬を救えるのは、オレだけ。

コエンマの言葉は、幽助の迷いを消し去った。
飛影とも蔵馬とも、馴れ合いを求めて一緒にいたわけじゃない。生き方を認め合うことで繋がってきた絆。それは例え未来に別れが待っていたとしても、崩れ去るような脆いものではなかったはず。
仲間を信じられなくなっていた自分自身に腹が立った。
わかっていたのに。
あいつらだって、迷ってるんだ。オレはそれをわかってやれたはずなのに。
幽助は走りながら、一度強く目を閉じた。
まだ、間に合うはずだ。
再び大きく開いた瞳は、強い意志を映し出して輝いた。
オレが、必ずおめェらを過去から引き戻してやるからな。


亜空間にたどり着くと、ひなげしは水晶を取り出した。
「こっち!」
彼女に導かれ、残る三人が駆け出す。
彼らが前進するごとに、水晶はその身に赤紫の光を帯び始めていた。
ふと、風景の変わらない暗い亜空間の中央に、白い影が見えた。自分たちが向かっている冥界の入り口近く、立ち尽くす影。その正体に気づき、幽助は咄嗟に呼びかけた。
「……蔵馬!?」
白装束の妖狐は、その呼びかけに僅かに反応を示した。ところが、振り返ろうとする仕草を見せた瞬間、まるで闇の淵へ引きずり込まれるように消え去ったのだ。
「なに……!?」
コエンマもその光景に驚愕して声を発した。
蔵馬と思しき影が立っていたはずの場所には、ナイフで切り裂いたような穴だけが残っていた。幽助は先陣を切ってその穴に突進したが、彼を追うことはできなかった。
「……どうなってるんだ!?」
「幽助、入れないのかい!?」
ぼたんが背後から穴を覗き見ながら訊ねた。
白い影を追って入ろうにも、目に見えない透明な壁が穴を塞いでいたのだ。
「なんかあるぞ、壁みたいなのが! さっき、ここを通り抜けたのは蔵馬だよな!?」
「ああ…ワシも見た。妖狐がここを抜けるのを」
「なんでオレは通れねェんだ!?」
「まさか……」
コエンマは見えない壁を睨みつけながら、呟いた。
「内側から結界を張られたのか…?」
近づいて、幽助と同じように穴に手を伸ばしてみると、コエンマの手のひらにも同じように冷たい壁の感触があった。
「結界を張ってるのはこっちじゃねえのかよ」
「霊界の結界は、この部分だけ欠落している。通れないとしたら、別の結界が張られたということだ」
「どうすんだよ!? 蔵馬は冥界に行っちまったのか!?」
「ああ、この向こうは間違いなく冥界だ」
「おかしいじゃねえか。なんで蔵馬は結界を通れたんだ」
「本当に蔵馬さんだったの?」
蔵馬を知らないひなげしが訝しげに問いかけた。
「ああ、それは間違いねェ」
「うん、蔵馬だったね」
幽助とぼたんはそれぞれ頷く。見慣れない妖狐の姿であったとはいえ、彼らは先ほどの白い影が蔵馬だと確信していた。コエンマにしてみても例外ではない。間違うはずもない仲間の姿が冥界に消えたことに、彼らは動揺を隠せずにいた。
「まずいな……蔵馬を閉じ込めたまま結界を修復すれば……」
「蔵馬はどうなるんだよ!?」
「……二度と冥界から出られなくなる」
「じゃあ、早く冥界から連れ戻さねえと!」
「そんな簡単には行かないわ! 私たちが冥界に入れないのに、どうやって連れ戻すの!? それよりも……一刻も早く結界を修復しないと……」
ひなげしの持つ水晶が放つ赤紫の光が、みるみる強くなる。それに怯えた視線を送りながら、ひなげしは幽助に反論した。
「けど、蔵馬はどうなんだよ! 見捨てろってのか!? おいっ、コエンマ…!」
「騒ぐな!! ワシも……、こんな事態は想定していなかった……」
コエンマが苦渋の表情で幽助に言葉を返した。その姿を前に、幽助はコエンマの次の言葉を想像し、固唾を飲んだ。
幽助の鋭い眼光を受けつつ、コエンマはしばらく沈黙していた。