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蒼氷(そうひ)@ついった
蒼氷(そうひ)@ついった
novelistID. 2916
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何年ぶりかは知らないが、池袋にもの凄い雪が降った。
もちろん池袋にだけ局地的に降ったのではなく、東京都全般に積雪し、都心の密集した交通網はあっと言う間に麻痺した。
路線も道路も使い物になりやしない。幸いこの時代にはインターネットという便利なものがあるわけだが、
幸か不幸か、ソイツのお陰で今日のような日は生身の情報屋はお役御免と言ったところだった。
たまにはこんな日も良いかもしれない、そんな怠けた考えで脳と暇を持て余し、チャットルームに入室しかけていたときだった。
突然今日に限って鳴るはずの無いインターフォンがけたたましい音を立て、一度鳴ったかと思えば、次の瞬間にはものすごい連続音に変わった。

「ちょっと人の家のインターフォンを連打するのやめてくれる?うざいったらありゃしな――何してんの静ちゃん」

溜息と文句を同時に吐き出しながらドアを開ければ、目の前に巨大なスノーマンもとい平和島静雄が立っていた。
この極寒の中でもいつものバーテン服のみを着ている姿を見るだけで、体感気温が10度は下がる。
肩や金髪に雪を積もらせたまま突っ立っている姿は、どこか電柱を彷彿させた。

「中入れろ」
「しょうがないから入れてあげるけど俺に感謝して――あ、ちょっと!床が濡れるから雪を落としてから入っ、遅かったか・・・」

俺の口上を聞くまでもなく、俺を押しのけて部屋に入った静ちゃんはあろう事か犬の様に身体を震わせて雪を撒き散らした。
落ちた雪はあっと言う間に透明になり、フローリングを濡らしていく。

「嫌がらせのためにわざわざこの雪の中を来たわけ!?もうホント今日のところは降参してあげるから掃除して帰ってよ、もー!」

子供のようだが、思わず地団太を踏みたくなった。
仕事が雪の所為でふいになり、どうにもならない状況に諦めて気分転換をしようとした矢先、また新たな邪魔が入るとは。
この天気に良い様に振り回されているとしか思えなかった。

「お前が寒がってると思って」
「何ソレ、だから俺が暖めてやるとか妙な気起こして来ちゃったわけ!?」
「・・・」

ヤケクソになって言い放った言葉に、静ちゃんは僅かに頬を染めて俯いてみせた。
(え、ウソ、冗談で言ったのに、まさか図星…?)

「ちょっとバカじゃないの!?静ちゃんのやってる事の方がよっぽど寒い!寒いよ!これだから童貞は――」
「寒い」

またもや俺の言葉を無視してぐしょぐしょに濡れた服のまま俺を抱きしめた静ちゃんは、そう言って首元に顔を埋めてきた。
髪から滴る雫が首筋を伝って、ものすごく冷たい。濡れた襟元が肌にべったり張り付く感触が、酷く不快だった。

「ホント馬鹿だね静ちゃん」
「うるせえな」
「ここまで馬鹿だと世話を焼ける人間も限られてくるよ全く。しょうがないからこの優しくて素敵な情報屋さんが・・・んッ」

言わせろよ頼むから。
冷え切って氷の様な指先が顎を掴んで、一方的に口付けられる。
経験もないくせにこういう所だけはイヤに勘が良くて、それでいて自信満々で――強引だから困る。
元もとのガサツさに加えて、凍えているお陰でますます不器用な動きをする彼の手に自分の手を重ねて、臨也はそっと微笑んだ。

「静ちゃんのせいですっかり冷えちゃったし、仕方がないから温めてもらうことにする、」

ね、良いでしょ?






***
気持ち悪いくらい甘くてスミマセン^q^
作品名: 作家名:蒼氷(そうひ)@ついった