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マスターキーを投げないで

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俺はタオルケットをマントのように翻し、そのままシーザーの顔をめがけて投げつける、すぐさまぐるぐるに巻いてやって、押し倒してシーザーのアントニオこと男性器を鷲掴んでやった!隙ありだぜシーザー!俺の裸体に見惚れてただろ!恋人になったら見放題の触り放題だぜ!
右手のアントニオを揉みほぐして柔らかさを堪能する。部屋の空調に合わせて薄着のシーザーの股間は俺の右手にジャストフィット。いや、ちょっとはみ出るこの重量感!いいねいいね。あったかくってちょっと汗ばんでて……そして……やわらかい……
「なんで少しも勃たねんだこの不能ーーーーー‼︎‼︎」
「お前相手に勃たねえだけだ!不能じゃあねえぞこのクソガキ‼︎‼︎」
「ぎゃぱーーーー!嘘だろ‼︎お前俺の身体好きだろ⁉︎信じらんねえ‼︎‼︎」
腹が立ったので、ちょっと力を込めて強引に揉んでやった。タオルケットをやっとこさ攻略したシーザーは、俺の顔を思いっきりグーで殴り飛ばしたあと、これまた思いっきり背負って投げ飛ばした。それでもまだ怒りがおさまらなかったらしく、馬乗りになって首を引っ掴まれる。嘘だろシーザー⁉︎ヤンキーだったとは聞いてたが今のシーザーからは想像もつかなかったので、油断した!これはタコ殴りコースだ。そもそも俺(の身体)を崇拝しているシーザーが俺に手をあげるだなんて思わなかった。結構ショックである。
「ぐえ……」
「お前は俺のミューズだ、お前と恋愛関係にはならないし肉体関係も持たん」
木炭で黒く煤けた左右の拳が握られて血管が浮かぶ。あー……殺されそうなのに顔がいいから見惚れちゃう。悲しいのか怖いのかときめいてるのか自分でもわかんなくて、顔に変な力が入ってるのがわかる。変な表情見られちまってんなあ。なんか一周回って冷静になってきた。画家であるシーザーは薄着だが一般良識程度には服を着てる。俺は別に全裸でいてもらってもいいんだけど。ぴったりしたタンクトップにハーフパンツ一枚だが、これなかなかセクシーなんじゃあないの?少し汗かいて、張り付いたタンクトップが目に毒だ。どきどきする心音を他人事のように聴きながら、ため息をこぼした。俺も写真とか始めよっかな、シーザーを被写体に写真を撮るんだ。きっと俺は夢中になってファインダーを覗き、シャッターをバシャバシャきるんだろう。というか、
「…………なんでいま勃ってんだよ……」
「……うるせえ、殴るぞ」
ばきっとさっきの右ストレートに比べればかわいい拳が俺の頭を小突く。ちょっと激しめのオノマトペが聞こえた気がするが気にしない。
俺の両脇を挟む太ももは工業用バイスかってくらいの力で俺を押さえつける。ただ腹筋の上のアントニオくんは、むく、とほんの少しだけ反応していて、青筋を立てながらもシーザーは赤面していた。
俺は未だかつてこんなに力を入れたことがないってほど腹筋を駆使して、シーザーのふとももをはねのける勢いで起き上がった。これ絶対明日筋肉痛きちゃうやつ。
「なになにいまのどこで反応した?揉んだから⁉︎それともなに、まさか殴るのが愛情表現ってやつ?あー俺結構マゾではあるけど痛いのはそんな好きじゃないからちょっとそこはできれば」
一瞬人生が終わったかと思ったけども、この反応はワンチャンあるのでは⁉︎押せ押せでいけばこう、いい感じになっちゃうやつでは⁉︎隙を逃さずシーザーに詰め寄ったがそこは修羅場をくぐり抜けてきた元ヤンレンチ先輩、起き上がった俺の腕をそのまま見事に掴み上げ立ち上がらせたかと思うと、そのまま身体を密着させて……どきっとしたと思うだろ?残念、密着したのは俺の腹とシーザーの背中。ハグだと思った?残念!照れなくてもいいのにな?脈があるってみんなわかッあっヤバイヤバイヤバ
「ぬううう‼︎黙って寝てろーーーーこのスカタン‼︎‼︎」
「んぎゃぱあーーーー‼︎‼︎‼︎」
決まりましたーー!ヤワラちゃんもびっくりの高速背負い投げ!これが公式戦なら審判もギャラリーも満場一致の一本が決まりました‼︎惜しむらくは俺はジュードーはてんで嗜んだことがなく、受け身をとる術も持たず一直線にドアをぶち破ることとなった。
かくして九七キログラムの巨体を誇る俺は、不本意ながら「アトリエのマスターキー」という二つ名を得ることになったのだ。


「次はこういう体勢なんかどう?」
「……春画じゃあねえって言ってるだろうが!」
「あいてっ!えー?でもセクシーでキュートだろ?」
「自分で言うなスカタン!」
「なぁ〜肉体関係は諦めるから恋愛関係になろうぜ〜〜俺ってば超の付く将来有望株〜〜一生絵ェ描くだけの生活させてやるからさぁ〜〜」
「ヌ‼︎そのボーズで止まってくれ‼︎‼︎‼︎」
「……はぁい」
「……ハァ……神よ……」
「……恋愛関係諦めるから肉体関係、でもいんだけど」
「お前とはふしだらな関係にはなる気はない」
「じゃあまじめな関係ならいいわけ?」
「……」
「えっまじ⁉︎いいの⁉︎えっほんとに⁉︎」
「うっ……動くなJOJOォーッ‼︎‼︎」


アトリエのマスターキーことムキムキプリティーアイドル、ジョセフ・ジョースターはこうして今日もヤンキーハンサムの腕に投げ飛ばされて宙を舞うのだ。