敵中横断二九六千光年4 南アラブの羊
イスカンダルがいじめっ子なら地球を売ろう。対価として高い地位を求めよう――そんなことを考える者が必ず出る。この〈ヤマト〉の艦内にさえ、いないものとは限らない。そんな人間を目敏(めざと)く見つけ、重用(ちょうよう)するのが人類中のエリートの〈セカイ〉なのだから。
そんなふうに藪は思った。目の前にいる船務科の子は、うーんと唸ってそれから言った。
「それならそれでいいんじゃないですか」
「『人類さえ助かれば』かい? そりゃそうかもしれないけどさ……」
作品名:敵中横断二九六千光年4 南アラブの羊 作家名:島田信之