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「ねぇロア、知ってる？
人が本当に死ぬのは、誰からも忘れられた時なんだって。」

ずっと胸に突き刺さっている言葉を、僕は親友に投げかけてみる。

「そうなんか？
人が死ぬのは、死んだ時だと思ってたのだぁ。」

彼女はあどけない声で言葉を返す。
よく意味が分かっていないみたいで、キョトンとしている。


「ロアはさ、死ぬのが怖い？」

続けて彼女に問いかける。

「よく分かんないのだ。ロア死んだ事ないから分からんー。」

首を傾げて、ちょっと考えてから、彼女は続ける。

「でもな？千歳ちゃんとお別れするんなら、死ぬのは嫌なのだ。」

…………。


「そっか。」

静かに、言葉を零す。

「僕はね、ロア。
僕は死にたいんだ。」

そう呟いた僕に、純粋な、真っ直ぐな瞳を向けて彼女は言う。

「なんで死にたいなんて言うのだ？ロアは千歳ちゃんとお別れするのは嫌でよ？ずっと、ずっと一緒に居たいんでよ？」


「僕もだよ。でも、それは叶わないんだ。ロアが悪魔でも、不老不死ではないでしょ？
必ず、いつかお別れが来る。僕は、今まで沢山の大切な人とお別れして来た。楽しい思い出、忘れたくない思い出が多い人ほど、お別れするのは辛いんだよ。」

だから、思い出が、これ以上僕の中に溢れないうちに。
記憶の輝きに目が眩まないうちに。

「僕は、死にたいんだ。

早く楽にしてくれませんか。」




僕にとって一番辛いことはね。


愛しい人との思い出を忘れてしまうことなんだ。
自分の手で、愛しい人を殺してしまう事なんだ。


…………。

だから。



「じゃあ、ゲームしよ？」

ロアちゃんが、楽しげに微笑んで言う。

「ゲーム？」

僕は少し呆気にとられて聞き返す。

「うん、ゲーム。
千歳ちゃんが、お別れしても辛くないなって、永遠も悪くないなって、いつでも思い出して、楽しかったーって笑える思い出を作ったら、ロアの勝ち。」

天使の笑みに照らされて、僕もつられて笑う。

「ふふっ。
いいね、やってみようか。」