先生の言葉 全集
87.マッパーのこだわり
おや、皆さん。どうも、ご無沙汰しております。
しばらくお会いしておりませんでしたが、その後、冒険は進展していますか。まあ、私がいうのもなんですけど、この迷宮は難しいので、なかなか一筋縄ではいかないと思います。でも、諦めたらそれまでですからね。とにかく、はいつくばってでも前進すること。そうすれば、少しずつでも物事が動いていきますよ。冒険も人生と同じで、案外そういうもんだったりするんです。どちらも基本的には暗いのに、その闇の中に身を置くことで光が見いだせるんですから、不思議なものですよね。
ええ。その冒険のことで相談がある? 私なんかで良ければ、お話を伺いますよ。……ふむ。うん。はい。なるほど。なかなかマッピングがうまくいかなくて、それで冒険が進展しない、そういうことなんですね。
それは、恐らくですが、皆さんのマップの書き方に問題があるんじゃないでしょうか。冒険者の方々にも結構な数、いたりするんですよ、地図をくるくる回して見ちゃうタイプの人。そうするよりもちゃんと北を上にしてみたほうが、分かりやすく正確なマップが描けるって、口を酸っぱくして言ってるんですがねえ。
あと、この迷宮には冒険者を惑わせるさまざまな仕掛けが施してありますから、それにも気を付ける必要がありますね。ダークゾーンに始まり、ワープや回転床、一方通行の扉など、容易にその階層のマップを完成させることのないような仕掛けが施してありますから、ゆめゆめ注意を怠らないようにしたほうがいいと思いますよ。
ところで、あなたがたは今どこの階を攻略中なのですか?
3階、ですか……。えっと、あなたがた、失礼ですが、確かまだ4階に行ったことがなかったですよね? うーん、そういうことですか……。それならばちょっと目先を変えて、4階に行ってみるのはいかがでしょうか。
ええ。3階のマップをきっちり作ってからというあなたがたの気持ちは良く分かります。ただ、この迷宮の3階はマップを作るという点においては非常に難しい階層だと断言できます。なので、ここで無理やり3階のマップを完成させようとして時間を食うより、先を急いで簡単にマッピングができるぐらいの力を手に入れたほうが効率がいいと思いますよ。ええ。4階のモンスターは確かにつわものぞろいですが、3回の面倒くさい回転床や落とし穴よりはまだどうにかなります。
分かった、4階に行ってみる? はい、ぜひそうしてください。