二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

とりあえず

INDEX|1ページ/1ページ|

 

**


 帰路の途中、ふにゃふにゃと欠伸を噛み殺す男の隣で、風丸は彼が我慢した欠伸をそれはゆったりとして、悪気はないのだが、風丸だけではなくお互いに眠気を抱かずにはいられなかったので、仕方の無いもんだと豪炎寺は、自由な欠伸に誘われて、一度は誤魔化した欠伸を今度は大口でした。

 あふ……、と息と同時に気も抜け落ちた風丸の、天敵を知らない動物のような、間抜けで気迫のない顔がとても可愛らしくてじっとりと見詰めていると、ただ惚けっと川の向こうの住宅街のそのまた向こうを眺めていた片目がこちらに気がついて、「なんだよ」といぶかしんだが、しかし、その声色からして別段豪炎寺が彼を見詰めようがどうでもよさそうだった。

「ねむいなあ……」
「そうだな」
「テレビゲームで夜更かしなんて、初めてだよ」
「俺もだ」

 毎週土曜日の練習スケジュールは、午後練習ばかりだったのに今週ばかりが朝一からの午前練習だったのに、彼らはそれがすっぽりと頭から抜け落ちていて、泊り込んで遊ぶことに必死だったものだから、ものの五時間も眠っていなかった。

「腹も減ったなあ」
「昼ご飯は何にする」
「ううん……」

 また口を大きく開けた風丸に返答はあまり期待できそうになかったので、豪炎寺は、「蕎麦を茹でて昨日作ったカレーの残りをかけて食べようか」と眠いばかりの彼の顔を覗きこむと、小さな返事を寄越してきた。

「それよりも、少し、ねたい」

 眠気を帯びると、この男は少し我侭になるようだった。
 そうやって、強い意識が僅かに薄れたときしか己の赴くまま意志を提示しない風丸に、僅かばかりの寂しさと、哀れみを感じて、右手を差し出せば素直に応じてくるので、それに甘んじて貝殻のように指を噛み合わせた。豪炎寺は眠気よりも食い気だったが。


作品名:とりあえず 作家名:陶|スエ