とある教師の一休み
ふう、と溜息をつきいつもの椅子に腰掛けると、今日魔法で三年生を吹っ飛ばしかけた生徒の顔が頭に浮かび、苦々しい笑みが口元に浮かぶ。
今日はたまたま、私が三年生の近くで呪文のかけ方を教えていたから庇えたものの、あの時私がそばに居なかったらどうなっていたことやら。
「・・・全く」
教師になってくれ、というダンブルドアからの依頼を引受けたは良いものの、教師という職業は思っていたより遥かに大変で、自分の学生時代の先生の苦労を思うと本当に頭が下がる。
かつての自分達のような手に負えない悪ガキ達がいないのが何よりの救いだ。
一息ついていると、ふとマクゴナガル先生から貰ったワインを思い出した。先生としてのささやかな就任祝いとして貰ったものだ。
机からそのワインを取り出してみる。自分が30歳の時に産まれた、1991年製のワインだ。
栓を抜き、グラスに注ぐと、透明なグラスが血のように赤い液体で満たされていく。
グラスを顔に近づけると、ふわりと花のような香りが鼻腔をくすぐった。
背もたれに体を預けワインを傾けていると、じんわりと疲れがほぐれていくのを感じた。
ワインの風味を楽しみながら、ゆっくりと更けていく空を見つめる。そうだ、明日はダンブルドア先生を誘って一緒に飲もう。きっと楽しいに違いない。
そう考えるとにわかに明日が楽しみになってきた。また明日も頑張れそうだ。