もしもパイロが生きてたら2
埋葬が終わった後、二人は旅に出た。沈んだ顔の子供二人の旅人は親を失った兄弟かと同情を受けやすく、保護を買って出る人も多かった。そこはクラピカのプライドが許さなかったのだが、代わりにできる仕事をすることをパイロが提案し、それを続けることで街から街へと旅を続けられた。二人で仕事をし、そのお金でパイロは病院にかかることもできた。そこで、パイロの病気は治るものだということを知った。しかしお金が足りない。そこで、クラピカは自身の戦闘力を生かしてお金を稼ぐため、天空闘技場に向かうことを提案したのだった。
「本当に僕のために無茶をしちゃだめだよ?」
パイロは心配そうにクラピカのほうを向く。足はまだ動くものの目はほとんど見えなくなっていた。
「まだそんなこと言っているのか?私はパイロのためならなんだってする、当然だろう?友達なんだから」
クラピカはあきれたように言ったあと、暗い顔をした。
「そもそも私は幻影旅団への復讐を諦められない。そのためにも戦闘能力を上げることは必須なのだよ」
その言葉を受けてパイロは悲しそうな顔をした。
「復讐とか言わないでよクラピカ、、、きっとそんなことをしたら優しい君は壊れてしまうよ、、、」
そこからしばし沈黙が続いた。
そんな様子を見ていたものがいた。ハンターであり念を教えているウィングだ。彼は常に円をしているパイロに気づき様子をうかがっていたのだ。
(あの民族衣装に先ほどの言葉、それに円をしていない方の子供の目が一瞬赤くなっていた。まさか、クルタ族に生き残りがいたのか!?)
博識の彼は正解にたどり着いた。
(しかしどうしたものか、、、片方の子供は念に目覚めている。このまま闘技場の200階に行っては目をつけられてしまうかもしれない。しかも、目が見えていない様子だし、円しかできない可能性もある。だとしたら最悪だ。金髪の子供が200階まで行かないことを願うか、それでもどこかで危ない念使いと出会ってしまったら、、、)
結局彼は忠告をすることにした。
「そこの君、自分が今していることに気づいているかい?」
パイロは先ほどからただものでない気配を円で感じ取っていた人に声を掛けられ目を見開いた。クラピカは思考の渦に沈み気づいていなかったようで、途端に警戒心を現した。
「あなたは何なんだ?どうしてパイロに急に話しかけてきた!」
「驚かせてしまってごめんよ」
ウィングは穏やかに言う。
「ただ、忠告がしたかったんだ。私はそこの彼と同じこといやそれ以上ができます。天空闘技場の200階以上にはもっと様々なことができる人がいて彼はそこの人たちに絡まれるかもしれません。また、君も何も知らずに200階以上に行くのは危険だ。もしも、行くことになったらまた、明らかな格上にどこかで出会い目をつけられることになったら、私を頼りなさい。」
それだけを言い終えると住所を書いた紙を渡し素早く人ごみに消えていった。
「聞いたかパイロ!彼も呪術が使えるんだ!それにもっといろんなことができるって!それならば幻影旅団への復讐に近づくかもしれない!」
クラピカは真剣な顔で住所の書かれた紙を見た。
「お金が目的だったから200階以上に行く予定はなかったが、こうなれば200階以上にも行こう、その前にパイロに何かあっては大変だ。今すぐにでも訪ねて呪術を教えてもらおう!」
パイロは復讐のくだりでは複雑そうな顔をした。でも決意を新たにし、
(確かに、呪術があれば僕も戦えるかもしれない、それにあの人ならクラピカの無茶を止めてくれるかもしれない!)
と思い、ウィングのもとを訪ねることに賛成したのだった。
作品名:もしもパイロが生きてたら2 作家名:翠 さく