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悪魔言詞録

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17.天使 エンジェル



 え? あっ、ああ、はい。ラフィン・スカルにハマですわね? 分かりました。今、唱えますわ。

 …………。

 早く唱えてくれ? ああ、ごめんなさい、ごめんなさい。

 何です? 今度はスダマさんにディア? 急いで? ええ、分かりましたわ。

 …………。

 ぼーっとしてる間にスダマさん、死んじゃった? ああっ、すみません。


 さっきから、考え事をしているようだけど、どうしたんだって? ええ、実は、ちょっと悩んでいることがありますの。
 実はわたくし、善の存在であるが故に、悪というものを知らないのです。わたくしが目隠しをしてる理由も、悪を視界に入れないようにし、清い存在であり続けようとするためのものなのです。ですが、最近考えてしまうのです。この目隠しのおかげで、わたくしは皆さんの足を、引っ張ってしまっているのではないのかと。
 先程もわたくしが、このことを考えていたせいで、仲魔が倒れてしまいました。このような体たらくでは、神の偉大な御意志を代行することなどできないのではないか、そんな気がしてきてしまうのです。
 いっそわたくしは、この目隠しを取り去り、思うままに神の御意志を行使したほうがよいのではないか。そんなふうにも考えてしまいます。しかし目隠しを取り去れば、わたくしは悪を知り、その道に染まってしまうやもしれません。わたくしたちが忌むべき、あの堕天使どものように。

 人の心を持つあなたに、このようなことを話すのは、はなはだ筋違いやもしれません。しかし、わたくしは今、真剣にこのことを考えこんでいるのです。

 ええ……。そうですか。あなたは、好きなようにすればいいと、そうおっしゃるのですね。

 その自由さ、それが人の子の考え方なのかもしれませんわね。……いえ、嫌みではないのです。少しうらやましいと思っただけ。でも、やっぱりわたくしは、今の境遇を変えるわけには行かないようですわ……。

 さあ、倒れたスダマさんを復活させるために、回復の泉に戻りましょうか。


作品名:悪魔言詞録 作家名:六色塔