悪魔言詞録
88.聖獣 ビャッコ
ああ、召喚主さん。どうもこんにちは。
何か悩みでもあるのかって? ええ。まあ、正直に言うと。でもなかなかどうしたらいいか分からなくて、困ってるんですよ。
はい。じゃあ、お言葉に甘えてお話させてもらいますけども。僕、一応四聖獣の一員じゃないですか。そのはずなんですけど、なんか他の3匹が最近やけに僕にきつく当たってくるんですよね。
やれ、前に出すぎだとか、もう少しこちらの指示を聞けだとか、揚げ句の果てにはゲンブさんまで、わしのことも考えてもうちょっとゆっくり動いてくれないか、なんて言ってくる始末なんです。
でもね。あの3匹はそう言いますけど、じゃあ誰が先陣を切って頑張ってるんだって話ですよ。ゲンブさんは渋い戦いが得意だからあまり前に出てくることはしないし、スザクのやつもどちらかといえばサポートが得意だから前衛での働きはにがてだし、竜のあいつはやりゃあできるけど、何かと司令塔になりたがる。僕しか前に立てるやつはいないってのが実情なんですよ。
そんな中で、召喚主さんの戦いを見ていて、僕、ハッとしたんですよ。あなたは状況次第で何でもやる。真っ先に切り込むこともいとわなければ、魔法での攻撃もできる。仲魔たちの回復や補助にも回れるし、作戦もちゃんと立ててくれる。戦いとはこうあるべきなんじゃないかと思ったんです。
だから僕、決めたんです。四聖獣を一度、脱退しようって。
あいつらも僕がいなくなればきっと分かると思うんですよ、何が大切かって。僕も召喚主さんの下についていけば、前に出るだけじゃない戦いを学べると思うんです。そうしないと、四聖獣の名は上がっていかない、そう思うんですよ。
どう思いますか、召喚主さん?
え、どうせまた四聖獣として頑張るなら無理に脱退しなくていいし、スザクもゲンブも褒めてたから、あんまり気にしなくてもいいんじゃないかなって?
……そうなんですか。なんか、悪いこと言っちゃった。みんな、ごめん。