来栖なお探偵事務所 2話 蠢くもの達
薄暗い部屋、そこには二人の男女がいた。
「まったく、いつになったらアレの情報が手に入れれるのやら」
男は飄々とした様子で悪態をつくと、女は冷静に言葉を返した。
「愚痴を言わないで、アイツが抜けてから、どんどん失敗する数も増えていっているんだから」
「でもさぁ、アイツの穴埋めなんてそうそう見つかりっこないぞ」
「アンタがそれを言うのかい?あいつを殺したアンタが」
「くっくっ、仕方ないだろぉ、上からの命令なんだからぁ、まぁ、あいつ気に食わなかったし」
「はぁ、上は何でそんな命令を下したのか理解に苦しむよ、それを快諾したアンタもアンタだけどね」
「へいへい」
なんとも物騒な話なのに、何でもないかのような話し合いは終わり、男が途端に空気を変えた。
「それで、今回の獲物は」
「朝谷カンパニー前社長の遺産」
「へぇ、あんな大手の遺産かぁ、さぞ、珍しいもんなんだろうな」
「その情報は今部下に集めさせてる」
コンコン
そう女が話したすぐ後に部屋がノックされた。
「誰」
「情報収集班です」
女の問に、扉の外にいる男の声が聞こえた。
「入りなさい」
「はっ!」
女の言葉に応えてガチャと、扉を開けたのは20代前半の細身の男だ。
「情報は」
「はっ!朝谷カンパニー前社長の隠したとされる遺産は娘にあたる朝谷菊に何らかの形で渡されるという事は分かりました。ですが、その遺産自体は何なのか未だに分かりませんが、現社長の朝谷菊が、先日探偵に何かを依頼してると言う情報を手に入れましたので、恐らく遺産に関する事かと」
「…分かった、引き続き情報収集をお願い」
「はっ!」
細身の男は扉を閉め、次の情報を集めに向かった。
「つまり、その探偵ってのが遺産を見つけ出した時、横から掻っ攫えればいいって訳だ」
男はそう言い、飄々とした態度に戻った。
(くっくっく、また人を殺れると思うと心が踊るぜぇ)
男のそんな内心を女は見抜いて落胆する。
(はぁ、また仕事中に殺す気なのか、まったく、アイツがいればもっと仕事は楽にすんだのに、何でこんな事に…て、コイツが殺したからか、はぁ)
女は殺された前の仕事のパートナーであった人を思い出していた。
(アイツには色んな事を教えてもらったな、最初の頃は、口煩くて、お節介な奴だと思っていたが、居なくなると、少しは残念に思ってしまうものなんだな)
女はそんな事を思いながら次の仕事の用意をした。
作品名:来栖なお探偵事務所 2話 蠢くもの達 作家名:サッカー