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永遠の幼馴染は無理だった

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「オッス!ブルマ……」

 勝手にブルマの僅かな気を探り当てて、悟空が瞬間移動を使って研究室に現れた。ブルマは驚いて煙草の火を消すと、眼鏡を外して悟空を睨み、頬を膨らませた。

「もう!孫くん!いきなり来ないでよね?」
「へへっ……、悪りい、悪りい」
「……それで?用件は何なの?」

 天才科学者で理系脳のブルマは、冷静に用件のみを聞いて来る。「修行の合間で、ちょっと暇だったから」だなんて、悟空は口が裂けても言えなかった。悟空が適当な理由を考えながら頭をポリポリとかいていると、ブルマは呆れたように笑った。

「……さては、暇だったとか?」
「ど、どうして分かったんだ?」
「……ハア、やっぱりね」

 ブルマがそう呟いて煙草に火をつけると、悟空は歩み寄ってそれを急に取り上げた。ベジータにすらされない行為に、ブルマは開いた口が塞がらなかった。

「おい、身体に良くねえぞ」
「……」
「辞めろよ!なあ?」
「な、何よ、偉そうに……」
「……こんなモン、こうしてやる」
「ちょっと……!孫くん……」

 悟空は煙草を拳で握り締めると、灰と抜け殻を灰皿へ落とした。ブルマはバツが悪そうに背を向けて、「今、忙しいのよね」と、大嘘をついた。幼馴染みに初めて叱られ、その悔しさに下唇をきゅっと噛んだ。

「……ホントか?」
「う、うん……」
「……嘘ついたって、オラ、分かるぞ」

 以心伝心でもしてしまうのだろうかと不思議に思い、ブルマは振り返って眼鏡をかけた。年齢を重ねてから視界がぼんやりとしてしまい、作業中は眼鏡をかけないと文字もろくに見えない。レンズ越しに映る悟空は、ベジータ同様、若い頃の風貌のままで。ブルマはそんな現実が恨めしくなると溜息をついて、肩を落とした。

「……ん?どうしたんだ?」
「アンタ達サイヤ人と違って、私は繊細なのよ」
「センサイ?それ美味いんか?」
「はあ、まったく、もう……!」

 悟空は余程ブルマの思考回路が気になったのか、彼女の頭に片手を置くと、静かに目を閉じた。ブルマは何をされているのかサッパリ分からず、茫然と立ち尽くしていた。暫くそのままで居ると悟空は朗らかに微笑んで、いきなりブルマを力強く抱き締めた。

「……おめえ、今、ベジータと喧嘩してんだろ?」
「ちょ、ちょっと……!何するのよ!離して……」

 悟空が言った通り、確かにブルマは昨晩、ベジータと口喧嘩をしていた。もう暫く口を聞きたくないとさえ思い、その日は研究所に籠っていたのだった。かざされた大きな手の平からその全てを見透かされたような気がして、ブルマは苛立ち、必死にその腕を解こうとした。しかし、力では到底、及ばず。

「こうするとさ、女は嬉しいモンだって……」
「……チチさんが言ってた?」
「ああ、ブルマも温いなあ……」
「バカッ……!離しなさいよ!」
「ベジータともこうして、仲直りすんだぞ、なっ?」
「なっ?……じゃ、ないわよ!」

 腕の力が緩んだ所でブルマは片手を振り上げ、悟空の頬をパチンと叩いた。なぜ叩かれたのかが分からない悟空は、きょとんとした瞳で彼女を見つめた。幼かったあの頃と何も変わっていない、純粋な瞳で。ブルマは「ごめんね、孫くん」と呟くと、思いきり背伸びをして、悟空の頬へ軽く口づけた。悟空ははにかんで片手を挙げると、「じゃあな!」と言って消え去った。独り残されたブルマは、悔し紛れに煙草の箱を捻り潰した。

 どこまでも真っ直ぐで、純粋で。大人になってからは、男らしくてとびっきり優しくって。いつかの私は、いつかの孫くんに、淡い恋をしていたのかも知れない。――嗚呼、私には、永遠の幼馴染は、無理だった。