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出会ってすぐに恋に堕ちた。
……え?誰の話かって?俺とシズちゃんの話だよもちろん。嫌だなあ、君から聞いてきたんじゃないか。え?嘘っぽいって?失礼だなあ、本当のことだよ。出会ってすぐに俺はシズちゃんが好きになって、もちろんシズちゃんだってそうだったんだから。嘘だと思うのなら新羅辺りにでも聞いてみてごらんよ。ドタチンでもいいけどさ。その時二人ともその場にいたんだから……っていってもすぐに二人とも席をはずしてくれてけどね。だってさあ、俺とシズちゃん出会って二分でキスしあって服脱いじゃってたからさ。まあ見ててもらっても別に俺は構わなかったけどね。新羅はどーでもいいって笑ってたし、ドタチンはそういうことするならどっか人目の付かない所にシケこめとか言ってたけど、まああれだよ。俺たちも高校生のヤりたい盛りだったからさまあそのままそこの屋上で。それからずっと毎日毎日そういうことばっかりしまくってたよ。朝も夜も昼もずっとね。よく飽きなかったねって?そりゃあもちろん。……すぐに飽きたに決まってる。当然でしょ?毎日毎日シズちゃんに組み敷かれて、腰振ってたけどすぐに飽きた。夕陽がシズちゃんの金髪照らしてるのとか最初は綺麗だなとかも思ったけど、毎日見てれば見飽きるよね。だからね、ある時俺は、繋がったままナイフを取り刺して、それをシズちゃんに突き刺してみたんだよ。すうってカンジで簡単に刺さったんだよねあの頃は。今じゃナイフで刺してもまともな傷なんかつきはしないから面白くないんだけど。でも、当時はまだシズちゃんの身体もねえ、一応それなりにしぶとかったけど刺せば傷くらい付いたんだよ。拭き出す血の赤がね、夕焼けの空の色よりも綺麗だったから。おれはちょっと面白くなってあはははははははははははははって笑いながらもう何回も何回も刺した。え?なに?酷いって?嫌だなあ、俺の素敵メモリーにケチつけないでよね。すごく楽しかったんだからさ。あ、それでね、シズちゃんはさ、信じられないって顔して俺の顔とナイフと何度も刺された自分の腹なんか何度も何度も繰り返し見て。その驚いた顔、君にも見せてやりたいなあ。傑作だったんだよ本当に。だけど、傑作なのはここからだ。シズちゃんはねえ、すぐに目の色変えてきた。さっきまで気持ちよさそうに俺のこと組み敷いて好きだのなんだのほざいてたその口で俺の名前、怒鳴るみたいに叫んでさ。それで、俺に殴りかかってきたんだよ。すごいと思わないかい?絶望とか衝撃とか裏切られた悲しみとか、そんなの全部吹っ飛ばして俺への怒りに変換してきたんだよシズちゃんは。腹の傷とか流れてる血とか、ホントそんなの知らないってくらいで全力で俺に。もっちろん俺は避けたよ?殴られたら痛いじゃない。それでね。今まで楽しかったなあでもシズちゃんとスルの飽きちゃった。だから今度は俺に殺されてくれないかなあってちゃんとお願いしたんだよ俺は。
そういうわけで俺とシズちゃんはね、それからずっと殺し合ってるわけなんだ。いい加減そろそろ俺に殺されてくれてもいいと思うんだけど、でもねえ、シズちゃんもゴキブリ並みに生命力強いから。なかなか死なないんだよこれが。どうやったら死ぬのかなあ。あの時見たシズちゃんの血の赤の色。それに染まったところを見たらすごく面白いと思うのになあ。金色と夕陽の赤とそれから血の色。綺麗なコントラストだろう?考えるだけでぞくぞくするね。自殺願望の持ち主をからかうのも携帯電話を踏みつけるのも、俺はすぐに飽きちゃったけど、シズちゃんと殺し合うのはもうその時からずっと続けているんだからこれはもう趣味とかって言っていいのかなあ。え?楽しいのかって?そりゃあねえ、楽しいのかどうかななんてそんなの知らないけどね、だけどもう何年も何年も続けちゃってるんだから、もはやこれは愛と言ってもいいと思うんだ。
うん、愛しているよもちろんね。
愛と言うカテゴリーに当てはまらないのなら執着かもしれない。
まあいいじゃないなんでもね。
とにかく俺はシズちゃんをこの手で殺したくて仕方がない。
だから、なあそれで充分だろ?俺とシズちゃんはこういう関係。よっくわかりましたか?
えー?やっぱりどう考えても嘘くさくて信じられない?あっはっは。そりゃあもちろん嘘だし。こんな話信じるほうがおかしいし。ああ、そうだねえ……どうしても本当のことが知りたいっていうならここからは別料金。情報料は先払いでお願いします。
- 終 -