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その後のはなし/その前のはなし

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/その前のはなし










ばかみたいに一瞬だった。

ごつい、俺のとは違うけど力強い手のひらが頭を撫でる。
そんな一瞬。



俺の事を理解して欲しい、愛されたい、受け入れて欲しい、すき、



そんな気持ちが心臓から一気に溢れて、顔が熱くなった。
多分表情に出た挙げ句真っ赤になった。


びっくりする位自然に怪物の頭を撫でたトムさんは俺のその顔を見て、ちょっと困ったみたいに笑う。
そりゃそうだ誰だって引くよな、ごつい男で、しかも普通じゃないバケモンで、そんで、



そしたらまたびっくりする位自然に涙がこぼれた。
準備運動もないまま涙腺が全壊して、ついでに鼻水もでた。きたねえ。


「すん、ません」

トムさんはなんにも言わない。
だから俺はもう一度謝って、トムさんに背中を向けた。
見せらんねえ。無理だ。


足が走りだすのに任せて池袋を駆け抜けた。
暫くして、跳ね回る心臓ごと石段に腰掛けて息を整える。
ひりひりする頬が気持ちわりい。


ただ、何故かまだまだ泣けそうな気持ちだった。