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気の毒だけど笑える話


 
「だって面白いもん。いつパンクするか楽しみでもあるんだ。あんちゃん、肥っちゃったのさ。肥ったなんてもんじゃないな。一日五キロは確実にふくらんでるな。いくら食欲の秋だといったって、全身これ胃袋だからね。まあ、肥るのも無理ないけど、おなじように食べてるおれが肥らないのに、あんちゃんだけブクブク肥るのは、身体の組織が狂った証拠さ」
「ほんと? そんなに肥ったの?」
「見たらショックを受けるぜ。そうだ。見せてやるから友だちをみんな呼んできなよ。ひろみちゃんはただでいいけど、ほかの連中から十五秒で二十円とろう。もっと見たかったら十秒十円ずつ追加だ」
「お金とる気?」
「そうさ。あんなの見ようたって見られないからな。――さあさ、いらはい、いらはい。恐怖のブタマン人間だよ。人間か風船か、はずむかころがるか、針を突き刺したい人は一回百円、それで空気が抜けたらおなぐさみ……」
 荒馬は節をつけて叫びだした。美しい公園の秋の風景とは全然関係のない会話である。
「いったいどうしてそうなったの?」
「最初はカゼだったんだ。クシャミが出て熱が出たら俄然、ブクブク肥りだしたんだよ。それで、いま絶食療法をやっているけど、ますます肥るんだ」
「そんなカゼってあるかしら?」
「たぶん、新型のブタマンカゼだろう」
「それで、いまどこにいるの?」
「家に閉じこもってるよ。お母さんが心配して近いうちに病院へ連れて行こうかといってるけど、ぐずぐずしてたらつっかえて部屋から出られなくなるんじゃないかな」
「すごい。見せて見せて」
 
画像:猿人対地球人表紙
 
――とまあ、こんなのを見てもわかるが、〈新型風邪〉なんて言葉は昭和の遠き昔からある。今は亡き加納一朗大先生のこの本が出たのが40年前の1981年1月、おれが小学6年のときか。
 
正しく何年かは忘れたがその年か前後くらいにNHKの〈朝の連続テレビ小説〉で『マー姉ちゃん』というのをやって、これが『サザエさん』の長谷川町子さんの伝記でおれは見てなかったがおれの母親が毎朝見ていて、本屋でその原作本を買ってきた。ふうん、と思って読んでみると、
 
画像:サザエさんうちあけ話まびき疎開のページ アフェリエイト:サザエさんうちあけ話
 
こんなことを描いているページがあった。おれの母親はこれを見て、
「これは『マー姉ちゃん』でもやってた。見て笑っちゃった」
などと言ってたが、〈まびき疎開〉ねえ。この本以外でそんなの聞いたことがないが、嘘を書いてると思えないから本当の話なんだろう。これは未遂に終わったようだが、実際にやった例があるのかどうか。
 
どうなんでしょね。ちなみにおれの母親は戦時中に東京の日本橋で生まれて空襲が始まると疎開したが、戦争が終わって戻ると家は焼けずに残っていた。人がいないならそれをいいことに叩き壊されてよさそうだが、そんな目には遭っていない。
 
空からグリコのキャラメルのでっかいやつに火をつけたようなもんをバラバラと撒き落とされる状況で「延焼を防ぐ」も何もないもんである。〈8.15〉の直前にそれをやってるところからして、これは、
 
アフェリエイト:日本のいちばん長い日 この映画とか、この映画とかの、アフェリエイト:日本のいちばん長い日
 
なんとやら事件と同じく戦争継続派の最後の悪あがきだったのじゃないかという気もするけどどうなんだか。
 
ポツダム宣言受諾は8月14日。降伏文書への調印は9月2日だが、日本人にとっての終戦は〈8.15〉だ。それが「日本は神国だから敗けない」という嘘がガラガラと崩れた日だからだ。コロナの嘘ももうそろそろ一日で砕け散るときが近づいており、それでは困る者達が悪あがきを始めた気配が感じられなくないが、どうなんだろう。
 
わからんよなあ。何しろウイルスというやつはハレー彗星やB-29や、酒鬼薔薇聖斗と違って眼に見えない。グリ森事件も未解決に終わっているため終わってないのと同じになって、未だに、
 
画像:吉山利嗣今の閉そく感が漂う日本になってると思う
 
こんなことを言うやつがいる。だが嘘だ。こいつだとか『キツネ目』の著者や、ミゾロギなんとかみたいなのがそういうことにしようとしているだけのことで、おれは前回、
 
   *
 
これ(グリ森事件)をテレビや新聞にかじりついて見ながら「うむむむうっ」とうなって、
「不可解だ。不可解の極みだ」
とか、
「なんという卑劣なやつらだ。許せない。断じて許すことはできない」
だとか言ってた世間のバカどもの感覚をほんと疑うよ。
 
   *
 
なんて書いたが実際のところ、マスコミや〈識者〉と呼ばれるウジ虫どもの話を真に受けて、
「森永の菓子には本当に毒が入っているに違いないんだ、食べたら死ぬぞ!」
などとわめいたのはごくごく一部の頭がカラッポな人間だけ。一般人の大多数は、
「なんかわからんがおもしろい事件だよなあ。犯人達はカッコいいなあ。次は何やってくれるんだろう」
と言ってたと思う。そしてもちろん、おれもそのひとりだった。
 
〈三億円事件〉の犯人は捕まってほしくない。〈かい人21面相〉もまた捕まってほしくない。彼らはむしろ世の中の閉塞感をブチ破り、風穴を開けてくれる英雄なのだ。それが気に入らぬマスゴミという心の腐った連中が『大衆の敵』のレッテルを貼り、穴を塞いで閉塞感で世をくるみこもうとする。社会が恐怖に支配された状況がエリートにとっての天国なのだ。本当の『大衆の敵』はこいつらだ。テレビの中ではキュージョー事件のハタナカ少佐みたいなのが「決起せよ」とわめきたてる。町では魔女狩りをしてきた者らがそれに応えて暴虐を働く。〈まびき疎開〉だ。ハタナカ少佐の考えたことだ。やれば戦争を続けられ、日本の勝ちで終わるのだ。そのとき自分らのしてきたことが、正当化されることになるのだ。
 
 
   できなければ自分達は、
   石を投げられることになる。
 
 
それがわかるから必死になって、ますます飲食店いじめやらなんやらすることになるが、するとやられる側の中に、市長なんかに陳情に行く者が出る。おれのおばあちゃんはB-29が来たときに一歳のおれの母親を抱え、お腹に次の子供がいた。その身で疎開先を見つけられたから東京を出ることができたが、できない者はどうなるのか。
 
「知ったこっちゃないですね。今は非常時なんですよ。個人の窮状なんかにいちいち……」
 
マスコミや識者に訊いてもそう言われるだけのことだ。専門家に訊いてみると、
 
「新型コロナウイルスは正式にはRX-19と言って、新型なんです。アムロが乗るのがRX-19-G2。G1が最初に発生した型で、G3型は灰色をしてます。さらにG4、G5、G6……」
 
「そういうことを知りたいのじゃなくてですね。ワクチンを射てば大丈夫じゃないのですか」
 
「素人さんはよくそう言いますが、そういう問題じゃないんですね。専門的な話をするとごにょごにょごにょごにょ……」
 
「テレビでこの前、学者さんがこんなことを言ってましたが」
 
「そそれはその人が間違ってるか、アナタが理解してないかですね。せ専門的なはにゃしをひゅるとごにょごにょごにょごにょ……」
 
作品名:端数報告5 作家名:島田信之