Detective?
「さてと。プロファイリングを始めようかにゃん♪」
資料を隅々まで読み込んで、調査対象の今後の行動まで予測していく。
極限まで集中していた桃井の耳に、「ふわぁ」と気の抜けるような欠伸が聞こえてきた。
「ちょっと大ちゃん。猫が集中してる時に、気の抜けるような声出さないでよ」
桃井は作業の手を止め、ソファで寝転がっている幼馴染を非難する。
表向きはこの幼馴染が探偵で桃井が助手ということになっているが、実際に探偵業を行っているのは桃井で、幼馴染は助手兼ボディーガードといったところだ。
「つっても、今オレやることねーじゃん。
大体、探偵業自体、お前一人でやりゃいいじゃねーか」
気だるげに言って、幼馴染は欠伸を噛み殺す。
やる気のなさげな態度に、桃井は「もう」と頬を膨らませた。
「探偵ってのは、恨みを買いやすいお仕事なの!
私みたいなか弱い乙女が探偵だって知れたら、何されるか分かんないでしょ?
だから、表向きは大ちゃんが探偵ってことにしておいたほうがいいの。
それでも、まだ助手として猫質にされる可能性はあるんだから、ちゃんと私のこと守ってよね」
「か弱い乙女とか、自分で言うかよ……」
「大ちゃんみたいな黒ヒョウと比べたら、猫はみんなか弱いの!
だから、大ちゃんはどこでも怖がられて普通のお仕事できないんじゃない。
私が養ってあげてるようなものなんだから、ちょっとは感謝してよね」
桃井が詰め寄ると、幼馴染は面倒くさそうに黒ヒョウの尻尾を揺らす。
「へーへー。感謝してますよ、っと」
心を込めずに言う素直でない幼馴染の耳に、桃井は「バカぁ!」と大声を浴びせた。
作品名:Detective? 作家名:紘史