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Detective ~apples and oranges

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 賑やかな一日を終えた翌朝。黛は朝の支度を整え、既に事務所で自分の机の前に座っている探偵のもとへ向かった。探偵の目の色を確認してから、懐から出したビラを探偵の前に置く。昨日とは目の色を変えた探偵が、赤とオレンジのオッドアイを黛に向けた。
「これは?」
「日本食レストランのビラ。お前の好きな湯豆腐が食えるらしい」
「なぜ僕にこれを?」
 首を傾げる探偵に、黛はわざとらしく溜息をついて聞かせる。
「祝ってやるって言ってるんだよ」
 素っ気なく答えると、探偵はオッドアイを瞬かせた。
「兄の誕生日なら、昨日祝っただろう。
 お前も玲央も、それに兄の昔の仲間たちまで」
「お前はまだだったろ」
 黛は探偵の両目を覗きながら返す。
 探偵の言う通り、目の前の探偵と体を共有している両目が赤い兄は昨日祝った。けれど、オッドアイの弟のほうはまだ祝っていない。
「僕に、誕生日などない。
 兄と違って、いつ兄の中に生まれたのか分からない」
「いつか分からないなら、いつ祝ってもいいじゃねえか」
 言いながら、黛はビラを探偵のほうに押しやる。
「とにかく、今日の昼はそのレストランに行くぞ。実渕たちとは現地で合流だ。
 その後はクリスマスマーケットに行くから、欲しい物考えとけ。庶民でも買える範囲の物でな」
「……まさか、小太郎と永吉も来るのか?」
「ああ。樋口もな」
 伝えるべきことは伝えたので、黛は事務所のソファに座り、読みかけだった小説を開く。
「それと、今日のうちに溜まった仕事は、明日、兄が片付けてくれるってよ。
 良かったな、おぼっちゃん」
 そう付け足して探偵のほうを見ると、探偵はまたオッドアイを瞬かせて、「そうだね」と小さく応えた。
作品名:Detective ~apples and oranges 作家名:紘史