Detective ~Boxing Day
「クリスマスも事務所で留守番をしていた使用人に、僕からのプレゼントだよ」
オッドアイの探偵は、そう言ってにっこりと笑った。
「誰がお前の使用人だよ……。まあ、貰えるもんは貰うけど」
クリスマスの昨日は依頼人もなかったし、事務所でソシャゲしてただけでプレゼントが貰えるなら安いもんだよな。――そう考えながら、黛は受け取った箱を開く。中に入っていたのは、ニシンのパイだった。
「魚か。悪くねえな」
「千尋は好きそうだと思ってね」
「見た目は好きじゃねえけどな」
パイの中からいくつも飛び出たニシンの頭を見て黛は呟く。いつ見ても、このパイの見た目は狂気だ。
「お前が好きな魚の加工品より、匂いはマシだと思うけどね。
それを食べたら、また一仕事してもらうよ。紅茶を淹れてくるから、休憩にしよう」
そう言って、探偵は珍しく自分から紅茶を淹れに立つ。普段なら、問答無用で黛に給仕させるのに。
「……どうやら今日は雪が降りそうだな」
窓の外の薄暗い空を眺めて、黛は小さく呟いた。
作品名:Detective ~Boxing Day 作家名:紘史