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後輩

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カラフルな落書きで埋められた壁の前で、根武谷の肩に乗った赤司がペイントブラシを握っている。
 赤司は低身長ではないが、バスケ部としては高身長とは言えない。それで人から見下ろされるのを極端に嫌っているが、今はすべての人間を見下ろせて、さぞかし気分が良いだろう、と黛は鼻で笑った。
「何笑ってるのー、黛サン」
「別に」
 葉山の質問に素っ気なく応じる。
 黛と葉山がいる場所は赤司たちから少し離れてはいるが、余計なことは言わないに越したことはない。
「ねー。なんで今日は来たの?」
 冷たい返事を気にした様子もなく、葉山がまた話しかけてくる。
「赤司に呼ばれて仕方なく来たって言っただろ。自由参加なんて聞いてなかったしな」
 今度は質問に答えてやると、葉山は、んー、と首を傾げた。
「そうなんだろうけど、それじゃ納得いかないんだってば。
 だって、じゃあ、なんで引退式は出なかったの? 引退式はサボって、こっちはサボらないとかおかしくね?」
「サボってねえよ。引退式は出ねえって赤司には話した」
「あ、そうなの? ……そっか。そうじゃなきゃ、赤司が無理やりにでも出席させてるよね。にしても、よく欠席するの許してくれたね」
 後輩相手に許してもらうというのも可笑しな話だが、相手はキャプテンなので仕方ない。
「直前くらい受験勉強させろっつったら、あっさり了承されたケド」
 葉山が「ああ、なるほどー!」と納得の声を上げた。
「黛サンは普通に受験するしかないもんね。試合で目立ってないから、スポーツ推薦とか無理そうだもん」
「目立っちゃいけない役回りだからな」
「なのに、決勝戦では目立っちゃってたけどね」
 何の躊躇もなく傷口に塩を塗られる。
 言い返そうとしたところで、「ちょっとー」と非難めいた声が飛んできた。振り向くと、赤司を抱えた根武谷の横で、実渕が不満そうな顔をしている。
「もう。曲がってないかどうか、ちゃんと見ててよ。あなた達、何の為に離れた場所に立ってると思ってるの?」
 いつものオネェ口調で注意する実渕に、
「ごめーん、レオ姉」
 と、葉山が調子よく返す。
 黛が黙っていると、実渕に「黛さんもよ!」と重ねて注意された。
「どいつもこいつも、後輩らしい可愛げがねえな」
「黛サンだって先輩らしい威厳がないじゃん」
 間髪入れずに返してくる葉山に、チッ、と舌を打つ。
「赤司から見たら、お前ら二年生だって同じだろ」
 黛の皮肉を意にも介さず、
「ホントだ!」
 と葉山は笑い声を上げた。
作品名:後輩 作家名:独楽