二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

バッシュ

INDEX|1ページ/1ページ|

 

「お誕生日おめでとうございます」
 夏休み最終日、テツに呼ばれて近所の公園に出向くと、誕生日を祝う言葉と一緒にラッピングされた箱を手渡された。
 通い慣れた公園でストバスしている連中の声を横に、その箱を受け取る。
「中身はバッシュです。去年のウィンターカップで火神君に頂いた物を返していなかったので」
 そう言って、テツは微笑を浮かべた。
 青峰が包装を破いて中身を確認すると、確かにそこには一足のバッシュが詰められていた。それも、青峰が最近欲しいと思っていたバッシュだ。
「……さつきに聞いたのか?」
「正解です。桃井さんに君が好きそうなバッシュは何かを聞いて、ボクと火神君でお金を出し合って買いました」
 テツの答えに、だろうな、と青峰は納得する。幼馴染で情報通のさつきなら、青峰が欲しがるバッシュのメーカーもデザインも常に把握しているだろうと思った。
「アレは火神にやるっつったんだから、別に気にしなくていいのにな。
 つうか、火神の相棒だからってテツが半分返すこたねえだろ」
「あのバッシュのお陰でうちのエースは存分に戦えたので、ボクからもお礼がしたかったんですよ」
「……あっそ」
 恥ずかしげもなく答えるテツに、つい素っ気なく返す。元相棒があの頃の真っすぐさを取り戻しているのに、自分はまだどこか捻くれたままだなと自覚した。
「覚えてたら、テツの誕生日に何か返すわ。何が欲しいか一応考えとけ」
「何も要りませんよ。君が笑ってバスケをしているのを見られれば、それで充分です」
「田舎のばーちゃんみてぇなこと言うんだな」
「ボク、お祖母ちゃんっ子なので」
 真面目くさった顔でテツは答える。もっとも、それはテツの表情筋があまり動かないことと、真っすぐに相手を見つめるところがそう見せているのかもしれなかった。
「それに、今日こうして君にバッシュを渡せたことで、ボクはもう満足しているんです。――中学の時に出来なかったことの一つを、漸く果たせたので」
「出来なかったこと?」
「はい。でも、これはボクと桃井さんだけの秘密です」
 そう言って、テツは珍しく照れたような笑みを浮かべる。
 テツに惚れてるさつきが、この顔を見て、この言葉を聞いたら……間違いなく卒倒するだろうな、と頭の片隅で思った。
作品名:バッシュ 作家名:独楽