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Detective ~Valentine

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暖炉の前のソファで、千尋がタブレットを手に寛いでいる。
 後ろから画面を覗いてみると、どうやらゲームをしているようだ。可愛らしくラッピングされた箱を持った女の子が、頬を染めた顔でこちらを見つめている。
「……なんのゲームだ?」
「ソーシャルゲーム。今、バレンタインイベントの真っ最中」
 赤司の質問に千尋は淡々と答える。
「どうしてバレンタインに女性がプレゼントを贈っているんだ」
 当然の疑問を投げかけると、千尋はフンと鼻で笑った。
「知らないのか。オタク大国・日本では女から男にチョコレートを贈るんだ。
 それもパートナー間とは限らない。
 むしろ、パートナーのいない女が意中の男に想いを告げるためのイベントとして主に認識されている」
 聞きかじったであろう知識を得意げに披露される。
 面白くなかったので、フンと鼻で笑い返してやった。
「どっちにしろ、お前には縁のない話じゃないか。
 そういうのは、バレンタインを共に祝うパートナーなり、想いを寄せてくれる女性なり見つけてから言うんだな」
「……お前だってそんな相手いないだろ」
「僕には必要ない」
 冷たく答えて、千尋が座っているのとは別のソファに腰を下ろす。暖炉の中で燃えている林檎のウッドチップの甘い香りが漂ってきた。
「――ところで、さっきの女の子は何という名前なんだ?」
「林檎。オレが読んでるラノベのヒロイン」
「へえ。可愛い名前だね」
 ソーシャルゲームにもライトノベルにも興味はないけど、林檎たんが可愛いのは認めるよ。
 そう言葉を継ぐと、千尋は驚いたようにパッチリと開いた目を向けた。
「……たん?」
作品名:Detective ~Valentine 作家名:紘史