黒籠アリス3
あやしい風体の一行が岸辺に勢揃いした。
鳥たちは濡れた羽を引きずり、動物たちの毛はべったりと体に張り付いて、皆がずぶ濡れで不機嫌で嫌な気持ち。
ここで一番の問題は勿論、どうやって体を乾かすかだ。
黒子は鳥や動物たちと一緒に、乾かし方を話し合う。
そうするうちも、知り合いに似たドードーが気になって仕方なかった。
「――この会議の休会を提案するぜ。人事を尽くして速やかに採択すべきは……」
「英語で話せよ!」
立ち上がり、軽々とした口調で言ったドードーを子ワシが嘲笑する。
「サルの言葉なんざ半分も意味が分からねえし、お前だって分かってねえんだろ」
子ワシは、にやけた顔を隠さずに言う。
ほかの鳥たちの中にも、HAHAHAと聞こえるように笑う者たちがいた。
「オレが言いたいことは、ただ」
ドードーは飄々として、
「こいつをイモムシちゃんのとこに連れて行かなきゃってことだよ!」
一直線にこちらへ向かってきて、ドードーはひょいと黒子を摘まみ上げる。
「は?」と素っ頓狂な声を上げる黒子も気にせず、ドードーは黒子を抱えたまま、ドドドと駆け出した。
黒子が知る物語をいろいろとすっ飛ばして、ドードーは深い森の中に黒子を連れ込む。
森の中で、黒子は周囲の草花を見回してみた。
予想通り、今の黒子と同じ背丈くらいの大きなキノコを見つける。
見上げたり、左右から眺めたり、後ろから見てみたりしていると、ドードーがまたも、ひょいと黒子を持ち上げて、キノコの笠の上に乗せた。
黒子の目に飛び込んできたのは、緑のフードをかぶった高身長のイモムシ。
笠のてっぺんで腕組みをして座り、細い筒で壺の中の何かをちゅうちゅうと吸っている。甘い香りがするから、中身はハチミツだろうか。
黒子を気にした様子を敢えて見せないイモムシの、フードの中の顔を黒子は覗き込む。
(……やっぱり、君ですよね)
元チームメイトそっくりのイモムシの顔を眺め、黒子は胸中でぼそりと呟いた。