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黒籠アリス4

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 イモムシと黒子は、しばらく黙ったまま、互いに目を合わせていた。
 そのうち、やっとイモムシがハチミツを吸うのをやめて、興味なさそうな、面倒くさそうな声で話しかけてくる。

「お前は何者なのだよ」

 こんなふうに口火を切られると、黒子としては会話を始めにくい。
 目の前の元チームメイトに似たイモムシは、元チームメイトなのか、ただのそっくりさんなのか。
 黒子は悩みながら、

「ボク……よく分からないんです」

 それだけ答える。

「どういうことなのだよ?」

 イモムシは手厳しい。

「はっきり話せ」
「だから、分からないんです。これ以上、なんとも言えません」
「お前は、誰なのだよ」
「まずはご自分から名乗るべきだと思いますが」
「何故なのだよ」

 イモムシが不機嫌そうな顔をする。
 黒子はムッとして、イモムシに背を向けた。
 その場を去ろうとすると、

「戻るのだよ!」

 イモムシに呼び止められる。

「お前に大事なことを教えてやる」

 黒子は、お得意のツンデレですか、と内心溜め息を吐きつつ引き返した。
 背後で、黒子をここまで連れてきたドードーがゲラゲラと笑っているのが聞こえる。

「背丈のことで、悩んでいるのだろう」

 どこぞの占い師のように、深刻な顔でイモムシは告げる。

「ええ。ダンクができるくらい高身長になりたいと思っています」

 黒子が食い気味に答えると、イモムシは不可解そうに首を捻った。

「元の背丈に戻りたいのではないのか」
「あ、はい。とりあえず、それでいいです」

 黒子は冷めた気持ちでイモムシに答える。
 イモムシは立ち上がり、黒子に背を向けると、

「片側で大きくなり、もう片側で小さくなる」

 と去り際に呟いた。

「片側ってのは、キノコの、だぜ」

 ドードーが後ろから補足してくれる。
 黒子がドードーのほうを振り向くと、ドードーは「じゃあな」と一言残して、イモムシが消えたほうに去っていった。

(……どっちが、どっちですか)

 そこまで説明していってくださいよ、と内心毒づきつつ、黒子はキノコの笠の両側の縁を一欠けらずつもぎ取る。

 その後、自分なりに試行錯誤をして、紆余曲折を経た結果、ようやく元の背丈に戻ることができた。

(どうせなら、元の背丈より三十センチくらい大きくても良かったですかね)

 内心そう思いつつも、とりあえず人間らしいサイズに戻れたことに黒子は満足することにする。

 ――次は、あの綺麗な庭へ入ることが目標でしょうか。

 例の物語をなぞっていると、急に開けたところへ出た。
 目の前にあるのは、1メートル20センチほどの小さな家。

「……ここに入るなら、また背を小さくしないといけませんね」

 少々がっかりしつつ、黒子は右手の中のキノコの欠片を齧り、身長を二十センチほどに落としてから家へ近づいていった。
作品名:黒籠アリス4 作家名:涼.