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ステージ

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 ストリートバスケをやっていると、つくづく高校バスケとは違うと感じさせられる。
 テンポが違う。対戦する選手の雰囲気が違う。
 そもそも屋内ではなく屋外だ。切り返す度に、キュッと床を鳴らす音の代わりに、ザリッと地面を擦る音がする。バスケ以外の趣味が音楽くらいしかないオレには、この音の違いが結構気になる。
「笠松! こっちや!」
 声がした方向に持っていたボールを投げる。
 受け取った今吉が、シュートを決め、にんまりとした笑みをオレに向ける。
 ――世界ってのは、広げるんやなくて、深めんと。
 そう言って、オレをチームに誘った日の今吉の顔を思い出した。
「やるねぃ。さすがに、高校で全国ベスト4以内に入った奴が揃うチームは違うな」
 対戦チームの春日がニッと笑う。
 オレがいるチームのメンバーは、全員が高校のインターハイかウィンターカップでベスト4以内に入ったことがある強豪校の出身だ。五人とも母校は違うが、全員が全国大会で対戦したり顔を合わせたりしている。とはいえ、対戦チームにいる春日も負けていない。春日の出身校は、高校バスケ界で東京三大王者と呼ばれていた学校だ。
「よく言うよ。お前が高校時代に身に着けたその足運びは、オレにとっちゃ脅威だ。ちゃんと対策打ってないと対応できねえ」
「ナンバ走りっていうんだっけ」と対戦チームの福井が話に入ってくる。
 手足一緒にして走るとか、雪国では怖くてできねえよな、と福井は岡村に同意を求める。オレのチームにいる岡村と福井は、秋田の同じ高校の出身だ。二人が言うには、雪国では雪が降ったら両手を少し広げてバランスを取りながら歩くのが普通らしい。福井がその場で実際にぺたぺたとペンギンみたいな歩き方をしてみせる。
「春日のいた正邦の技術はすげえよ。――結局、正邦とオレらのいた高校の結末を分けたのは、チームにキセキ級のエースがいたかどうかなんだろうな」
 自チームのメンバーの顔を眺めて思う。オレのいた海常高校、今吉のいた桐皇、岡村のいた陽泉、樋口のいた洛山、宮地のいた秀徳には、キセキの世代と呼ばれるエースがいた。そして、正邦を下した誠凛にもキセキの世代と同格のエースが。
 キセキ級のエースが入学してくるまで、少なくとも、同じ東京三大王者だった秀徳と正邦の間には然程の実力差はなかった筈だ。
「あの天才どもと同じステージにいた時は、頼もしかったり妬ましかったり、精神的に忙しかったけどさ。こうして別のステージに移っちまうと、あいつらがいないと張り合いがないな、って思っちまうな」
「それは他のストバスチームに対して失礼だけどねぃ」
「しゃあないやろ。あの化け物どもとずっとやってたから、そっちが普通になってまってるもん」
 お陰でストバスでは、オレら敵なしやわ。そう言って、今吉は高らかに笑う。
 その場にいる誰も否定しないのを見て、そうだな、とオレは苦笑を返した。
作品名:ステージ 作家名:独楽