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手袋を買いに行ったら大好きな人ができました2

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 ヒュッと息を吸い込んで言葉を失った炭治郎に、小さくうなずくと、洋服屋さんは炭治郎たちを見回して静かに言いました。
「今日は泊っていくといい。最後の夜だ」



 洋服屋さんの言葉に、いつもは騒がしい善逸や伊之助も黙り込んでしまって、それぞれ考え込みながらベッドに入ります。
 伊之助の手首には、結局藍鼠色のリストバンドがはめられました。洋服屋さんから最後の贈り物です。もうお代としてお手伝いをすることはないのですから。
 今日も炭治郎は、洋服屋さんに抱っこされてベッドに入りました。洋服屋さんは自分のことについて、やっぱりなにも言ってはくれません。けれどみんな、洋服屋さんが何者なのか、なんとなくわかっていました。
 少なくとも、炭治郎と禰豆子は、あの方を思い浮かべずにはいられませんでした。
 洋服屋さんの、やさしくて悲しくて、寂しい匂いに包まれて、炭治郎の大きな目がじわりと涙で潤みます。洋服屋さんはそっと炭治郎の頭を撫でてくれました。
 そして、炭治郎にだけ聞こえるように、小さく囁いてくれたのです。

「炭治郎……俺の名前は義勇だ。もしも俺を呼ぶときが来たら、そう呼びかけろ」

 そんなときが来なければいいがと言う洋服屋さんの声は、少しつらそうでした。
 けれど、炭治郎の小さな胸には喜びがいっぱい溢れて、とうとう涙が零れました。
 初めて名前を呼んでもらって。初めてお名前を教えてもらえたのです。
 本当にこれで最後な贈り物。
 それを大切に噛みしめて、炭治郎はゆっくりと眠りに落ちていったのでした。