Passive Love
「平和島君は、折原君のことが好きなんじゃないかなあ」
「・・・・・・気持ち悪いこと、言わないでよ」
ムードぶち壊しじゃない?
臨也は、女のYシャツの中に忍び込ませた手を止めた。顔を上げて女と目線を合わせれば、女は「ごめんなさい」と悪戯っぽく笑う。
細い指先が臨也の頬に触れる。そのままつつ、と滑るように、未だ疼く傷口へと辿り着けば鈍い痛みに顔を歪めた。
「ここも、」
首筋、
「ここも、」
鎖骨、
「ここも、」
腕、
ここ、も。
心臓の真ん中を、差して指は止まる。
「キスマーク、みたい」
「・・・だから、冗談きついって」
「ふふ」
奇妙なほど、上機嫌の女に臨也は眉を潜め、そのまま首筋に噛みつく。淡い矯声が漏れ出た唇を奪い取り、息も尽かせず交わし合う。
終えれば、女は肩を上下させて酸素を取り込む。
目尻に浮かんだ涙をペロリと舐めて臨也は女の背筋をつつ、となぞる。
「君は、俺とシズちゃんに何の期待をしてるわけ?」
「期待なんか・・・っあ、してないわ」
嫉妬してる、だけよ
「・・・・・・嫉妬?」
「ええ」
平和島君が羨ましいのよ、
「どうして」
「さあ、どうしてかしら」
「答えになってないよ」
「・・・・・・そうね、」
貴方を愛せることかしら
躰の内に外に所有印を付けていつの間にか貴方をさらっていてしまって
本当に、妬ましい
女は臨也の首筋に唇を寄せて、傷口に噛みついた。じわりと口内に広がる鉄錆の味。
「・・・・・・愛してるよ」
酷い人ね貴方は
わかったような顔をして、その唇でいとも簡単に愛を囁いて
ねぇ私は一度でも
"愛して欲しい"なんて言ったかしら
「貴方からの愛なんて、お断り」
「手厳しいね」
「ふふ」
そうね
でも仕方ないわね
貴方は 臆病者だもの
( ああ 、 )
貴方"たち"、か
愛しています愛しています愛しています
作品名:Passive Love 作家名:ゆち@更新稀