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ひまっくす
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novelistID. 61093
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ガラスのコップは割れやすい

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「もう!そんなに言うことないでしょ!」
「事実じゃないか。そう怒る必要はないと思うけど」
「そうだね!怒る必要はないよね!?でも怒る理由はあるよ!」
「理由?些細なことじゃないか…」
「私にとってはそれが許せない理由なの!!」
そう怒鳴りながら勢いよく椅子から立ち上がると先程まで口をつけていたガラス製のコップが落ちて、割れた。
「あ…」
コップが落ちて割れる音を聞いて私は我に返った。本当、なぜそんな些細なことでこんなにも腹を立てていたのだろう、と思い返すほどさっきまで冷静ではなかったのだ。
正面に座ったままのハロルドは落ちたコップに目を一瞬やったあと私の方をまた真っ直ぐ見つめた。いつもは柔らかい笑顔を見せる彼だが今日は眉を潜め厳しい表情を浮かべている。
「とりあえず」
彼が口を開く
「コップ、拾ってしまおうか」

怒っていた理由なんて本当にちょっとのことで、作りおきしてあった容器に入ったカルパッチョに使ったフォークを入れて口に運んだのだ。もちろんいつもの私なら気にしない。でも今日は何に対しても穏やかじゃない気持ちを抱いてしまう日だった。それを注意したところ、言い合いになってしまったのである。
「あの…ハロルド、さっきあんなに怒ってごめんなさい。私も冷静じゃなかった」
「ん、いいよ。ガラス拾ったけど細かいのがあるかもしれないからスリッパ履いておいで」
「うん、あなたの分も持ってくるね」

謝れた。そして彼はいつものように許してくれたけど、こちらには見向きもしなかった。まだ怒っている可能性がある。
「本当、なんで怒っちゃったんだろう……」
自己嫌悪。なんで、どうしての気持ちで気分が落ち込んでいく。過ぎたことを思い出しては悲しくなってくる。
「クゥーン」
スリッパのある玄関付近でうずくまってると、飼い犬のサンディがすり寄ってきた。よかった、あの時リビングに来てなくて。肉球痛くなっちゃうからね。
「サンディ、私今すごく悲しい気持ちになってるんだ…このスリッパ、あなたのご主人に届けてくれる?」
「ワン!」
「ありがと」
カシャカシャと音を鳴らして彼の元へ彼女を行かせた。今は彼に合わせる顔がない。
「うぅ……ヒーン」
彼はいつも私に優しい。優しすぎてそれにいつも甘えてしまう。これは彼にとっても私にとっても良くはないこと。支え合うのと依存とはまた別物だ。私は今、依存している状態だ。
「わたしなんて、だめなんだ…」
涙が止まらない。彼に心配をかけてはいけない。迷惑も勿論かけてはいけない。
ただ私は静かに泣くことしかできない。
「ごめんね、ごめん……」
何に対しての謝罪なのかわからない。けれども心が押し潰されそうで謝ると少し楽になる気がして。

リビングから聞こえていた掃除機の音が止まった。
結局私はまた彼に甘えてしまったのである。
こちらへ足音が近付いてくる。
「ねえ」
すぐ後ろから声が聞こえる。しゃがんでるのかな、声が近い。それでも私は顔を上げない。泣き顔なんて見せなくない。
「ガラス綺麗に拾えたよ、スリッパを仕舞いたいんだ。これをお願い」
手の気配がすぐ側でしたので脇の下の隙間から距離を確認して受け取ろうとすると、腕を引っ張られて彼の胸の中へ納まる形になった。
「僕が怒ってると思ってる?」
コクリ
「サンディに向かわせたら危ないじゃないか。彼女は賢いから大丈夫だったけど」
「………ごめんなさい」
「いいよ。次からは君が持ってくるんだよ、いいね?家族に怪我はさせられないだろ」
「………うん」
「さぁ反省はここで終わりにして顔を上げて?」
「やだ可愛くないもん」
「おや誰だろう、僕の彼女に可愛くないなんて難癖つける人は」
「今はヤなの。…泣いちゃったから」
「……僕は本当に怒ってないからね。人の心を持った同士だしきっとそれが普通なんだろ?それにちょっとだけ喧嘩に憧れてたんだ僕。」
「……変なの」
「変じゃないよ、喧嘩できる相手なんて居なかったんだぜ?だから今は嬉しい気持ちなんだ」
「…フフッ変なの!」
「あ!笑った!」
そのとき、驚くべき早さで彼は私の顔を両手で包むように自分の方へ向かせた。
「いひゃいよ…」
「うん、鼻水出てても君は可愛いよ」
「!!!!」
「ハハハなんてね、ようやく君の目を見れた。君の目はすごく澄んだ色をしているんだ。僕はその色がとーっても好きで……」
一方的に蕩けるような声色で慈しむような瞳でこちらを見るので私は自分の顔がどんどん紅潮していくのがわかった。
「も、もう…わかったから…やめてよ…」
思わず目線をそらすと、すかさず合わせてくるなんなんだもう。
「わ、私ねあなたに甘えてばかりで迷惑なんじゃないかって思ってたの。だからなにもしてない、できない自分が嫌になってここにいたの」
タイミングじゃないかもしれないが、自分の考えを素直に打ち明けた。
「うん、うん。そうだったんだね。僕は頼られるのはすごく誇りだと思ってるよ。ほら、そういう役目のもと僕は生まれたから」
「そう、そうだったね!私の、杞憂だったね」
「だからもっと甘えてほしいな?たくさん君を可愛がりたい…」
「ウッ?!ま、まって……」
彼の唇が近付く、言葉なんて届かずそのまま軽く2、3回唇同士が触れあった。
そして口を軽く開かれて舌でハイタッチをするみたいに触れ合い、だんだん奥へ、口を食べるように……

「ハーッハーッハーッ……待ってって……少しだけ、今ちがうのぉ…………」
「確かに。玄関なんて少しムードがないね。食べ物も片付けたからこのままベッドルームにいかない?」
「シャワーなし?」
「終わってからでも浴びれるよ、一緒に行ってもいいなぁ」
「!!!!!エッチ!」
「そうだ明日、よかったらショッピング行こうよ。君の新しいコップ買いに行こう」
「そうしよう~楽しみにしてるね!」
「…加減はできるだけするからね」
「ん?」

おしまい